心理療法序説 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション 4)
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心理療法序説 (岩波現代文庫 〈心理療法〉コレクション 4) / 感想・レビュー
roughfractus02
臨床の知は、科学の知と宗教の信の間にある。本書で著者は、心理療法での治す/治るの関係を医学・教育モデル(治す)/成熟・自然(じねん)モデル(治る)に分類しつつ臨床の知の複雑さを語る。クライエントを環境や文脈から切り取って単純な因果関係に還元すれば科学の知に陥り、環境や文脈を切り取ってクライエントの世界観を否定すれば宗教の信に陥る。一方クライエントの話を聞くだけでは一時的解決しか得られない。深層心理に触れる心理療法は治す/治る関係にそのつど特異で持続的関係が要請され、診療の具体的手順や制度にも及ぶとされる。
2022/12/05
らい
主観と離れた科学の知があまりにも強力だから因果関係で現代人は問題を解こうとするが、果たして人間の心にはどこまで適用できるのか。序説と言っても系統立てたものではなく、著者の実感のこもった一冊。周囲と関係が切れてしまった時に必要なのは、科学的対処ではなく、「神話の知」ではないかと言い、それは世界を宇宙論的に濃密な意味を持ったものとして捉えたいという根源的な欲求という。このことが一番印象に残ったかな。心の奥深くの混沌な部分を昔話や神話や伝説など一見荒唐無稽に見える物語を通して表現してきたというのも面白い。
2024/05/02
柘榴(ざくろ)
河合隼雄の心療医療に対するスタンス、テーマ、大事にしていることがよく分かった。 興味深かったのは序盤の、雨が降らなくて人々が困り果てていた村に、ある男がやってきて、村の中のある小屋に引き篭っていたら、何日か後に雪が降ってきた、という事例である。後で村人が『どうやって振らせたのですか?』と問うても、『私は何もしていない、ただ、私自身が「道」になっただけだ。』と答えたという。 詳しくは読んで欲しいのだが、心理療法もそれと似たところがあり、治療者がクライエントを治すのではなく、クライエントが自然に良くなる↓
2022/12/06
藤々桃
わたしにとって今読むべき最良の本だった。 心理療法を行う人間として心がけるべきこと、考え方の道筋が治療者の視点だけでなく、研究者としての視点からも事細かに書かれていて、繰り返し読みたいと思う一冊である。最終章の「闇のなかに光を見出すことこそ、多くの偉大な芸術家のしてきたこと」であるという記述は特に印象深く心に残った。 芸術家の作り出したものに触れた際、それらに勇気づけられたり、それらがヒントになる場合もある。努力の積み重ねによってこそ心理療法家の成長も生じるのだという最後の一文は強い励ましになった。
2015/05/12
かずぴー
夢だぁ。
2014/06/06
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