「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫)
「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
Aster
フランス現代思想史 構造主義からデリダ以後へ (中公新書)の冒頭にソーカル事件についての概説が書いてあった。この事件はフランス現代思想の前菜としての扱いをされるほど一過性で軽んずられるものでは無いと…我ながら強烈に思った。そしてそのセンセーショナルな事件以上に科学と認識論についての考察を披露してくれる本、「知」の欺瞞は学問に携わる人間は必ず読むべきだ。ソーカルは単にポスト構造主義を無意味なものだと批判したのではなく、科学用語の濫用と無意味で悪質な衒学的な文章を批判したのだ。
2020/04/16
南北
ポストモダニズムの人文科学や社会科学の言説で数学や物理学を誤ったアナロジーで表現していると告発している本。取り上げられた言説を見る限り、著者たちが数学や物理学を理解せずに必要もない数学や物理学を使っていることは明らかだ。この本の批判だけでポストモダニズムが全否定されたわけではないが、ポストモダニズムの研究者や批評家は自分たちの言説を再検討する必要があると思う。付録として著者の1人であるソーカルが提出したパロディー論文が掲載されているが、本文を読んだ後に読んでみると本書を書いた理由が見えてくる。
2021/04/02
Sam
ソーカルといえば「ソーカル事件」だが、本書では冒頭からポストモダンの思想家をぶった斬っていく。曰く「科学者の大部分はラカンやクリステヴァやドゥルーズの擬似数学的ばか噺には一顧だに与えていない」、「テクストが理解不能に見えるのは、他でもない、中身がないという見事な理由のためだ」等々。なるほどと思いつつも科学的知見のない自分にとっては正直どれほど「中身がない」のか確信は持てない。とはいえさすがに「『われわれの勃起性の器官が√-1と等価である』などと言われると心穏やかではいられない」に至っては笑ってしまったが。
2021/06/18
HANA
ソーカル事件から興味を持って読みました。連想したのは『トンデモ本の世界』。一方はオカルトで一方は思想という違いはあるものの、科学を間違えたまま引用しているという点では同じように思える。それにしても引用された文、論旨の意味が解りづらいなあ。自分など大学時代に論旨をわかりやすく書け。と怒られたものだが、哲学は違うのかなあ。あと社会や歴史に数式や公式を当てはめるのは、左翼の持っている病理だと思った。世界ってそんなに単純なものじゃないと思うけど。付録の論文は本文を読んだ後に読むと、実に皮肉が効いていて面白かった。
2013/06/20
壱萬参仟縁
1998年初出。2000年邦訳初出。科学社会学のストロング・プログラム(130頁~)。知識とは、正当化された真である信念か、それに類似したものと考えているが、ブルアは社会学者にとって知識とは人々が知識とみなす一切のもの(133頁注113)。このプログラムは曖昧であるというのが結論という(139頁)。インドの民衆のための科学の運動に参加した生化学者メーラ・ナンダ(157頁)。相対性理論と社会学の結びつきは、よくてもアナロジーどまり(197頁)。
2015/10/07
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