本の神話学 (岩波現代文庫)
本の神話学 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
masabi
【要旨】神話学的関係性を元に共通する思想を軸とした書物群や人物群を描き出す。【感想】耳馴れないオペラや芸術その他筆者の有する広範な知に呑まれた。様々な書物や人物から共通するものを引き出し、思いもよらない風景を読者に示すのは圧巻だ。
2016/12/10
NICK
「学のこと、知のことで悩める人は山口昌男の『本の神話学』のひと晩読破を勧める」と高山宏が言っている。これをひと晩で読めたら相当な精神的タフガイだろう。凡人たる自分は知の濁流に押し流されないようにするのが精一杯だった。実証的な史的記述というのは確かに必要かつ重要ではあっても近視眼的になりがちだ。この本ではジャンルを飛び越えた文化全体を同時代現象として捉え、知の領域を広く捉えようとする。シェイクスピアが民俗学などを通して68年の大学紛争に接続される驚き(=快楽)! ある「知」には必ず大きな水脈が潜んでいるのだ
2015/04/20
anarchy_in_oita
博覧強記という言葉がここまで相応しい本はなかなかお目にかかれないだろう。20世期におけるいくつかの卓越した知性について、その成果を表層的に輸入するのではなく、いかにしてその知的生産を「根こそぎ」移植するか。山口は数々の書物の断片の中にそれぞれの知が生み出された文化的背景・精神的風土を見出し、系譜学的に記述していく。ここまで情報量が膨大だと話の筋を追うだけで一苦労である…しかし無数の引用が折り重なり、互いの対応を示していく中に、見えざる知的伝統を浮かび上がらせるその手法は圧巻であった。
2020/03/14
hiyu
幅広いというありきたりな感想であるが、自分には到底思いつかない、考え付かない境地があった。ルネサンスへの言及が自分にはより新鮮であった。
2023/06/09
石臼
優れた知見や思想に出会った時、それにただ感心するか、それとも嫉妬するかが分かれ目となる。嫉妬して、「どうして自分には思いつかず、この人には思いついたのか」を考えるという行為の実践がこの本だ。
2014/05/06
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