神話の心理学――現代人の生き方のヒント〈〈物語と日本人の心〉コレクションIV〉 (岩波現代文庫)
神話の心理学――現代人の生き方のヒント〈〈物語と日本人の心〉コレクションIV〉 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
アルピニア
「はじめに」で河合氏は、物語を読むのに人間全体の力が要る。(中略)ここに述べているのは「私の読み」。読者はそれをヒントに自分の読みを見出し、自分の生き方について考えてくださるといいと思う。と述べている。神話は人が生き、成長していく過程で出会う問題に対する普遍的な示唆を含んでいる。普遍的ということは、誰のどんな状況にもあてはまり、その人の読み取り方でヒントを与えてくれるということ。生活の中に神話が入り込んでいた頃、神話は思春期にふと思い出すようなあるいは無意識になぞっているような存在だったのだろう。
2017/01/18
ぺったらぺたら子
なんだか妙に「ふわっ」とした本で、一般的な読者向けに書かれた軽い教養書なのかもしれない。一貫した著者の主張や論理なんだれども、神話の解説も軽いコメントというのかほとんど感想に近い感じでサッと流していく。読みやすいのだけど、ちょっと物足りなかった。副題が「現代人の生き方のヒント」というくらいなので、そういう本なのだろう。神話の入り口としては楽しく読めた。神話は苦手でろくに読まずにいたので、これからもっと読んでいきたい。
2023/09/24
呼戯人
人間の心が持つ神話産生機能に着目した神話と心の働きを分析した本。言葉遣いは優しいが内容は非常に難しい。人類は5万年ほど前から神話をしきりに作ってきたが、その中に現代における人間の心の働きを自覚するのに適した神話がたくさんある。ことのはじまり、男と女の深層、親子の葛藤、生きた智恵などに関する神話分析を通じて現代人も直面する様々な人生の課題に応えようとする試み。河合隼雄の本は現代における知恵の汲めども尽きぬ源泉である。
2016/12/18
roughfractus02
「なぜ」この世界は、私たちは存在するのか?科学がこの存在論的問いを「どのように」という存在的問いに変えざるを得ないのは、「なぜ」という問いには存在の外から答える必要があるからだ。著者はこの問いに答えてきた神話が、科学と意識からなる自我(Ich)中心の現代に、無意識の中に潜んでいると考える。成長と自立を示す親殺し、他の生命を食べて生きることですでに悪を内包する人間に関する神話を語る著者は、意識と無意識をを包括する自己(Selbst)の中にある自らの影との関係を示す神話に、古来からの生き方の知恵の宝庫を見る。
2022/12/17
マーシー
俺は今まで何をやっていたんだろうか。家族が嫌だと言いながらも家族に甘えている自分がいる。携帯代ですらも。俺は甘えという言葉が嫌いだ。その甘えという言葉は他人から発せられると多くの人を無為に無想像に傷つけるからだ。でも、自分の中から出てきた甘えについては、自分で甘えだと思った事柄については、逃げちゃダメだと思う。自分の中のオイディプスを認知し、自立へと向かう勇気を持ちたい。
2017/02/19
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