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定本 昔話と日本人の心〈〈物語と日本人の心〉コレクションVI〉 (岩波現代文庫)

定本 昔話と日本人の心〈〈物語と日本人の心〉コレクションVI〉 (岩波現代文庫)

定本 昔話と日本人の心〈〈物語と日本人の心〉コレクションVI〉 (岩波現代文庫)

作家
河合隼雄
河合俊雄
出版社
岩波書店
発売日
2017-04-15
ISBN
9784006003494
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定本 昔話と日本人の心〈〈物語と日本人の心〉コレクションVI〉 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー

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Shin

先日買った『千の顔を持つ英雄』を読もうと思ったら、そう言えば積読本の中にこの本があったなと思い出して手に取る。日本各地に伝わる〈昔話〉を、日本人の意識/無意識の構造を反映したものと捉え、様々な角度からユング心理学の補助線を使いながら分析する。西洋的な「戦って勝ち取る自我」に対し、常に受動的で女性(母性)優位な展開を見せる日本の昔話は確かに日本人の特異性を表しているように思える。

2021/07/22

roughfractus02

深層心理的には、西洋の昔話では男性が意識から無意識を冒険して意識に帰還するが、日本の昔話では女性が無意識から意識を冒険して無意識に帰還する、と本書は捉える。日本の昔話の各話を女性の冒険として比較すると、男性の試練が達成に向かう成長段階を持つのに対し、女性の試練は儚く消え、恨みを抱き、耐え、意志を持つ等のバージョン(状態)に分かれて無意識に戻る特徴がある。ここから、完全を目指す父権的冒険と異なる無に戻る母権的冒険を日本の昔話に見出す著者は、女性が男性に「見てはいけない」と言う場面は無意識の指し示しと捉える。

2022/12/19

Inuko

40歳を過ぎてから日本の文化に何か懐かしさを覚えるようになり、自分のアイデンティティを古くから伝えられている昔話のなかに見ることができるのではと考え手に取った。が、とても難しくて第5章でリタイヤ。笑いが開けをもたらす点は、なるほど、現在の人間関係でもそうだと思う。また、西欧の昔話ではその完結性が心を打つのに対し、日本では、それ自身としては完結していないように見えながら、その話によって聞き手が感じる感情~「あわれ」という美的感情~を考慮することによってはじめてひとつの完成をみるという対比が興味深かった。

2022/02/27

黒澤ペンギン

図書館本。幼少期に「まんが日本昔ばなし」を見てよくわからず中途半端だと思ったりもした自分にとってとんでもなく面白い一冊だった。 ありえないようなことが当たり前に起こる、つまり日常と非日常の共存を「無」によって説明するところでひとつの答えを貰えた。 また、日本の昔話の女性像に日本人の自我の姿が現れているという。昔話の女性たちは悪をも受け入れる全体性を持っていて、完璧になろうとせず、常に変化の状態にあって多重の自我を内包している。 河合隼雄やユング心理学自体への興味も高まった。

2022/06/15

らい

母なるものの無の吸引力の強さが日本の物語の基本にあり、最後に残る余韻まで含めて物語は成立すると。特に興味深かったのは、笑いについてで、超越者はなくても超越性は存在し、それは「笑い」によって一気に相対化される。日本においては他ならぬ最高神の天照がその過程を辿らないといけなかったのだから、この無の働きかけは強いと。これすごいしっくりくる。「あわれ」や「おかし」は脈々と現在まで受け継がれているが、どんな自我の傾向を持っていようと全体性を高めて行こうってことやね。あけましておめでとうございます。

2021/01/05

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