平面論――1880年代西欧 (岩波現代文庫)
平面論――1880年代西欧 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
gorgeanalogue
まあまあ面白かったけど、この「像」と「貌」の対立のドラマという(フランス文学者的な)舞台装置そのものが、もう古びてしまっているというのは否めないところだろう。「投射」の観念の位置づけがもう一つうまくいっていないんじゃないかということに加えて、「イメージ」の変貌とともになったというところの「近代」の「イメージ」がもう少し説得的でない。それにしても、著者本人の文庫本あとがきのボヤキはともかく、解説の島田雅彦はこんなボンヨー(それ以前にすら思える)なこと書いていていいの?
2018/12/18
古義人
松浦寿輝によるおフランス式表象文化論入門といった本。表象の性質やそれを成り立たせる基底への意識の向け方など、かなりわかりやすく書かれてあるという印象。像と貌、蝟集空間と無人空間といった二項対立の周りを旋回し続ける叙述スタイルといい、『失われた時を求めて』が参照されるのも松浦の敬愛するバルト(『明るい部屋』)的である。というかこの対立自体ストゥディウム/プンクトゥムの拡張ではないか。
2020/10/02
ゆとにー
既存の学術分野からは距離を取りつつ、近代におけるイメージ体験がいかなる様相を呈するかに迫る論考。イメージは近代において芸術家や共同体のようなだれかの所有物ではなくなり、亡霊のように漂う匿名の存在となって我々を統御するようになった。表象するものは、世界という全体を記号というないもので表す、不可能性を孕む行為を担うがゆえに、特権的な座に位置し、イメージの成立基盤を与える「枠」への自意識を異常なまでに活性化する。
2018/06/19
ねじおさん
人生貌に侵食されている。毎日貌的体験に苦しめられてるけど、プルーストみたいな貌の体験をしたい。
2024/11/07
岡部淳太郎
同じ著者の『エッフェル塔試論』よりかはかなり硬い。というか、後記で著者も懸念しているように、観念的なものとして読まれうる危険性もあるが、自分としてはそれなりに面白く読めた。なんだかんだ言ってこの人の書くものは好きだということをあらためて実感。
2019/02/03
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