哲学の起源 (岩波現代文庫)
哲学の起源 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
呼戯人
柄谷行人の交換様式の研究のうち、特に交換様式Dを取り上げ、その発生からソクラテスの登場まで、交換様式Dとして登場してきた哲学の姿を描く。哲学の発生の背景には、ギリシア初期のイソノミア(無支配)があり、特にソクラテスは、ダイモーンなどギリシアの原古的な交換様式Aの回帰が見られ、それゆえソクラテスは死刑になったと推論する。パルメニデスやヘラクレイトスの解釈など、これまでの哲学史にはないような斬新な解釈が見られ、びっくりするような新しい哲学が語られている。
2023/03/05
またの名
民主主義によって平等な政治を発明したのではなく逆に骨抜きにして堕落させたアテネ、現実世界の外に超感覚的存在を創ったピタゴラスに乗り越えられたのではなくピタゴラスの非現実性を克服しようとしたパルメニデスとヘラクレイトス、師匠ソクラテスが回復した原理を否定するためにソクラテスを使う弟子プラトン。通説を次々ひっくり返して本書が明快に描き直す古代ギリシャの歴史は、僭主独裁から生まれ独裁を基盤にする民主主義が自由と平等を花開かせる過程ではなくむしろ滅ぼして隠蔽されていった、もう一つの自由平等の原理イソノミアの興亡。
2020/10/18
月をみるもの
デモクラシーの、クラシーは「…の支配(力、権)」「…政治・政体」「政治階級」を表し、デモはデーモス(民衆)からきている。つまりは多数派が支配するのが民主主義ってことで、その限界はすでに2500年前には明らかになっていたのであった。共産主義が滅んだ後、イソノミアを求めたイオニアの哲学者・科学者たちを「継ぐのは誰か?」 世界が滅びる時に、懺悔の放送したくなかったら行動せんとな。 https://bookmeter.com/reviews/88490643
2020/04/09
singoito2
41頁6行目「イオニアでは独立自営農民が主であり」といったのに12行目で「彼らは積極的に商工業と交易に従事」したと言ったり、43頁では「イオニアの諸都市(略)を示す史料はほとんどない」と述べて、訳分らない。これは哲学書ではない。著者がマルクスから受けた啓示を伝道し運動に接続するための福音書なんだ。啓示を求めて読むなら良いけれど、真理を求める人の役には立たないと思う。
2022/11/22
羊山羊
古代ギリシャの哲学思想を、その社会事情、情勢なども含めて再定義を試みる1冊。中々野心的。こういう本、そういえば今までお目にかかったことがない。ギリシャの自然哲学を反宗教と定義したり、ソクラテスを公と私の統合者としてみる視点、凄く斬新。そしてデモクラシーの裏には、必ず奴隷として収奪される人々がいたことを示し、古代ギリシャの神話性にぐさりとメスをねじ込む1冊。価値観のアップデートは常から重要だが、この1冊は飛び切り面白かった。
2020/03/20
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