山師カリオストロの大冒険 (岩波現代文庫 文芸 67)
山師カリオストロの大冒険 (岩波現代文庫 文芸 67) / 感想・レビュー
かんやん
18世紀ヨーロッパを席巻した(?)カリオストロ伯爵の伝記、みたいなもの。そうだった、種村季弘はこうだった、つまり詐欺師、ペテン師、オカルト、秘密結社、陰謀論に舌なめずりするような。ざっと並べてみると、フリーメンソン、薔薇十字団、錬金術、降霊術、千里眼、文書偽造、美顔水、美人局(笑)、王妃の首飾り事件……。読者を煽るような書き方に知性が感じられない。面白おかしければ、何でもよいのか。スピリチュアル、偽似科学、カルト、フェイクニュースなんてものは、手を変え品を変え(ない場合も)いつの時代にもあるものだ。
2018/05/20
くらむ
18世紀にあって、すでにジャーナリスティックな男カリオストロ。そのオカルティックな能力の真偽が計り知れないだけに、想像力をかきたてられ、魅力的だ。
2015/08/11
ymazda1
カリオストロ伯爵って、伝説じみた謎の人ってイメージで、てっきり、オカルトっぽい本なんだろうなと思って読み始めたら、参考文献の信憑性とかを確かめる術は自分にはないけど、ふつうに歴史上の人物として描かれてて、意外に面白かった・・・あと、ルパンのカリオストロくんと被る何かを見つけたかったけど、それは、見つからんかった。
富士さん
再読。種村先生の神秘主義文学にどっぷりはまったもやもやした文体は慣れるまでイライラしますが、事実と幻想がシームレスな現実をありのままに受け入れていたこの時代の空気感が、この時代の代表的な人物を通じてよく理解できる本です。現実と幻想は分けられるという19世紀の容赦のない狂信を踏まえた現在に生きる我々には、科学と手品、神秘と技術、文学とデマが分けがたく混在している有様はともすれば異様で、ゲーテとこの人が並んで論じられることにも違和感がありますが、しかし、このような有様こそが歴史的には常識なのでしょう。
2017/02/08
編集兼発行人
フランス革命を間近に控えたヨーロッパで跳梁跋扈した奇術師に関する評伝。何も無い処に何か在ると他人に思わせる能力に長けた少年時代を経た男が東洋の神秘性を疑似的に纏って上流階級の社交界に登場し相棒の女を引き連れて広範な移動を繰返しながら各所で人々の欲望に火を付けては消さずに逃亡する様子と其の謎に迫り良きにつけ悪しきにつけ「信心」が近代化により崩壊してゆく一場面を活写。人物においては匿名性を行為においては記名性を帯びる主人公の顛末は願望を理解と錯誤させる「営業の技術」として現代のビジネスにも応用が可能かと推察。
2013/12/21
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