好色の魂 (岩波現代文庫 文芸 112 野坂昭如ルネサンス 1)
好色の魂 (岩波現代文庫 文芸 112 野坂昭如ルネサンス 1) / 感想・レビュー
hirayama46
物語の舞台となっている時期はやや違えど、昭和期のエロ関係の物品を取り扱う人々を書いている点ではデビュー作の『エロ事師たち』と共通しています。最も大きな相違点はこちらのほうは実在の人物をモデルにしていることでしょうか。中盤のディティールの積み重ねは圧巻でしたが、ややストーリーテリングに縦横さが薄い部分もあるかな……と感じました。しかしやはりこの文章のリズム感と密度は素晴らしいものですね。
2022/04/21
Mark.jr
昭和初期エロ系の出版で著名な梅原北明氏をモデルにした小説。とにかく題材とアングラ的熱気を含んだ日本的としか言いようのない文体との相性が抜群で、著者自身の思い入れを感じる作品です。
2020/01/13
gkmond
野坂の文章読みたくなって引っ張り出した。もっと猥雑なのかと思っていたが走馬灯というかあらすじというか、案外淡白。ただ性の向こうに聖がっつー凡庸極まるモチーフが、もしかして成功してんじゃね? と思ったくだりがあり、こりゃすごいってなった。しかし一番知りたかった「野坂どんなタイミングで助詞削ってるんだろ」は解けず。なんか(無意識にせよ)ルールあると思うんだけどなあ。
2023/09/30
wasabi
表題どおりの内容にて、不服申すに及ばぬもエログロに終始し、かつひたすら懲りない主人公には辟易するばかり。時代の寵児であるやも知れぬが、この一冊まるごと読んで人物に成長の欠片なく、学ぶべくを見いだせなかった。
2010/05/06
koala-n
実在の出版人、梅原北明をモデルにした貝原北辰という人物のエロ本地下出版一代記。エロ本の出版が、国家権力との闘争という一面を含んでいて、捕まっても懲りずに、あれやこれやの方法で権力の目を盗んではまた怪しげな本を出して、また捕まっての繰り返しだが、そのいちいちにシャレが効いていて、読んでいて思わず頬がほころぶ。エロ本界の宮武外骨と言ったら、ちょっと褒めすぎか。ただ、日本が戦争へと近づくにつれて元気がなくなり、ほとんど意気阻喪するように戦後すぐに亡くなる様は少なからず痛ましい。著者のグル―ヴィな文体が心地よい。
2013/08/16
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