説経節を読む (岩波現代文庫 文芸 121)
説経節を読む (岩波現代文庫 文芸 121) / 感想・レビュー
瓜坊
水上勉に案内されて説経節の筋を追い、伝わる古跡や伝承を巡る。筆者が幼少の頃、大正時代の若狭にはまだ辻や阿弥陀堂で人形を繰りながら語られる説経節があったそうで、たとえば盲目の筆者の祖母がクライマックスでいつも涙を流すといった情景の記憶などが挿入されると、多くの文盲の庶民や盲目の老人が観客としてそばにいた、近代以前の語りの芸に対する肌感覚は、筆者のようなギリギリ接していた世代の回想で想像するしかない。
2018/05/24
ダージリン
山椒大夫や信太妻などは話として知っていたので読んでみようと思った。何とも言えぬ語り口調は情緒を誘う。記憶を辿ると信太妻は手塚治虫の漫画で知ったのだが、手塚さんのアレンジは凄いなと改めて感心した。
2010/09/10
酔うた
水上勉の語り口が、また一つの「説教節」となっている。その語り得ている地平は、現代においても決して古いものではないのだろう。「伝統とはのっぺらぼうのようなものではなくて、伝統とは創造をとおす以外にありようのないもの」と山本吉左右氏の言葉を引用しながら、日本の古層と現代を水上氏は見事につないで見せる。脱帽の一冊。
2019/11/18
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