生キ残レ 少年少女。 (岩波現代文庫 文芸 142)
生キ残レ 少年少女。 (岩波現代文庫 文芸 142) / 感想・レビュー
浅香山三郎
敗戦直後の食料難、飢餓の経験をした著者が、農業政策の誤りや飽食の時代と呼ばれたバブル世代の日本の現状を批判する(1989年単行本として刊行、岩波現代文庫は2008年刊)。体験をベースに信念に基づいて、減反政策・食料自給率の低下を批判し、(当時さういふ言ひ方はなかつたが、)反グローバリゼーション的な視点もある。大地の恵みから乖離した生活への批判でもある。農協や国鉄の問題点が捨象されてゐるといふことはあるにせよ、農業・地方の切り捨てを亡国的と嘆く。同じ頃に井上ひさしも『コメの話』を書いてゐたことを思ひだした。
2022/12/10
佐々木 駿
食べものの大切さをひたすら説いていて、脅かされるような印象を受けます。「豊葦原の瑞穂の国で飢え死にし」など、衝撃的な句が満載。
2016/01/11
紅独歩
なぜ著者がこれほどまでにコメ=食糧にこだわるのか、それは彼がアニメ「火垂るの墓」の原作者である事を知れば理解しやすいだろう。あの「兄」が「生キ残ッテ」書いたものなのだ。この本の原本の刊行は1989年、すなわち米輸入自由化の発端となった1993年平成の米騒動の直前である。著者の警句も奏功せず、現在ではTPP加盟によって国産米はさらなる危機に直面している。いまさら減反政策の終了が発表されたが、さて自然相手の農業が思い通りにコントロールできるかどうか、心許ない。はたして「キミハ生キ残ルコトガ出来ルカ?」
2013/12/01
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