荷風と東京(上) 『断腸亭日常』私註 (岩波現代文庫 文芸 153)
荷風と東京(上) 『断腸亭日常』私註 (岩波現代文庫 文芸 153) / 感想・レビュー
きさらぎ
荷風は明治12年生まれ。二十歳前に明治維新を迎え、海外留学を経て官僚・実業家として成功した父から明治文明を、儒学者の娘である母から江戸文化を受け継いだ。荷風は留学経験を持ち、フランス文学に親しむ近代人でありながら、歌舞伎や三味線、時代に取り残されたような職人たち、失われてゆく江戸情趣に心を惹かれる。四十代で自らを老人に擬し、独居生活を楽しみ、日記を綴る。だが彼の江戸趣味も下町好みも、明治人としての江戸趣味であり、山の手人の下町好みだった。荷風はそれを自覚しつつ、変わりゆく東京に自らの夢の風景を重ね見る。
2016/11/19
まさにい
荷風の住居である偏奇館(ペンキ塗りであったことからこの名を付けた)は、僕の地元だったところ(麻布竹谷町⇒麻布の下町=坂の下にあった)に近い。同じ小学校の大先輩にエノケンや山口瞳等の人がいる)。そんなこんなで、僕の知らない時代の近所のことが書いてあって、想像力もふるに使えて楽しく読めた。僕のころの下町のイメージは、隅田川の汚濁や大気汚染等あまりいいイメージはなかったが、明治の隅田川は泳げたとのこと。羨ましくもある。この10年ほど、山歩きではなく、東京街歩きをしている。荷風散歩ゆかりの地もいってみようと思う。
2017/10/16
方々亭
40数年間もの間書き継がれた断腸亭日乗。様々な切り口でその日記の世界を掘り下げている。断腸亭日乗が好きな人であればこの本はとても有益だ。
2022/06/19
やまべ
『断腸亭日乗』を読んでいるあいだに感じた興味深い点が幸運にも著者とうまく重なっているようで、すらすら謎ときされる感じで面白く読める。引き続き下巻へ。
2011/11/04
感想・レビューをもっと見る