湿原(下) (岩波現代文庫)
湿原(下) (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
わんつーろっく
冤罪の汚名を雪ぐことはなんて困難なのだろう。人権無視の厳しい取り調べに屈し、一旦嘘の自白をしてしまったが故に、死刑の判決が下された厚夫。そして共犯とみなされた大学生の和香子。国家なんて存在しないほうが、戦争もせず世界平和が訪れると、権力に抗う活動家たちの思想。今になって何故、1985年刊行のこの長編を再読しようと思ったのか。袴田事件の再審に触れ、当時の静岡県警の横暴な取り調べに証拠捏造、学生運動。あの頃の時代背景に触れたかった。そして私は底なしの湿原に立ち尽くしている。
2023/04/09
mami
中学時代の恩師から勧められて読了。冤罪をテーマとした長編小説だが、時代背景など難解で挫折しそうになりつつなんとか踏ん張った。無罪放免を勝ち取った主人公の恋人和香子が、ジャーナリストたちに対して意見するシーンは現代社会となんら変わりがない。マスコミの在り方について今一度考えるべきではと思ってしまう。
2016/05/30
ソングライン
弁護士阿久津の活躍により主人公2人のアリバイが証明されていきます。獄中で書かれる雪森の半生記は罪を犯す人間の弱さと罪を悔い改めようとする彼の苦しみが描かれ、胸を打ちます。刑務所内で読書の喜びに気づいていく描写が好きです。重厚な作品に満足です。
2016/06/01
hal
下巻に入るとストーリー展開もはっきりして、ミステリー的要素が加わってくる。法廷ドラマ・雪森の成長小説・更に恋愛小説の要素も明らかになり、上巻で呈示された事実進行の内面が多角的に肉付けされ、“読ませる”。主人公二人の人物も去ることながら、阿久津のキャラクターも面白い。重厚ではあるが決して読みにくくはない小説です。亀山郁夫の解説がヘビー級!さすがロシア文学者。
2014/01/18
ふみふむ
国家による冤罪作り。これは今でもある。この小説連載をしていただなんて、朝日新聞は今と違ってリベラルだったのね、、、
2010/05/05
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