増補 幸田文対話 (上) 父・露伴のこと (岩波現代文庫 文芸206)
増補 幸田文対話 (上) 父・露伴のこと (岩波現代文庫 文芸206) / 感想・レビュー
羽
『台所のおと』を気に入り、幸田文の他の作品も少しずつ読むようになった。小説やエッセイではない、幸田文の声は初めて聞いた。志賀直哉や江戸川乱歩、黒柳徹子といった大物を前にしても、ふだんらしく、言葉の選び方も素直なところがいいな、と思った。江國香織以来、しばらく好きな女性作家に巡り合えなかった。読むたびに惹かれ、「この人の作品は、全部読みたい」という女性作家に、やっと出会えたようだ。下巻もたのしみ。
2022/07/27
Susumu Kobayashi
幸田露伴の娘文の対談集。元版の『幸田文対話』に未収録を加えて、上下2巻にしたもの。上巻は主として父を語ったもの。特に、雑誌『宝石』に掲載された江戸川乱歩との対談と黒柳徹子との対談が面白かった。露伴は文とともに人間を観察して、さながらホームズのようにその人間について推理してその結果を競ったという。黒柳徹子との対談では文は父露伴に「『器量が悪く生まれたのはお父さんに似ているからで、損した!』『髪の毛少ないのもお父さんに似ているから損した!』(中略)みんな言った!(笑)」。愉快である。
2018/03/15
amanon
これまで小説、随筆を通して垣間見てきた幸田と露伴の父娘関係。それがここでは幸田の肉声を通して語られることになる。若い頃は何かと反発していたものの、見ているところはちゃんと見ていて、適切な言葉を投げかける露伴。そして、その露伴の最後を看取り、悪口を言いながらも、その一方で愛情を隠さない幸田。明治大正昭和という激動の時代を生き抜いてきた二人の姿は何とも言えない重みを覚える。また厳しいだけでなく、娘と推理ごっこに興じる露伴というのも、何ともお茶目で可愛らしい。こういう側面があってこその親子関係なのだろうl。
2018/03/11
つー
本書は幸田文と各界著名人との対話を纏めたもので、97年の元版を増補し2012年に刊行された。上巻は1950年代の対談がメインで文芸家の相手が多いが、木村伊兵衛、志賀直哉に黒柳徹子など実に豪華な顔ぶれ。江戸川乱歩との『幸田露伴と探偵小説』は、幸田文と露伴がかつて列車に乗るたびに人相や身なりから乗客の職業を類推していた逸話などを含め、幸田父子の観察眼と生活知の深さを窺い知れて興味深かった。最後の『徹子の部屋』だけは晩年の1981年収録で、自然体で大笑いする幸田文がお茶目な感じで、個人的にお気に入りの一つ。
2020/08/05
pirokichi
何年も読まずに置いてあった本をふと手に取った。今が読むべき時だったのかとても引き込まれた。興味深くて面白かった。心に響く言葉が多くあちこち付箋を貼った。対談の相手は小堀杏奴、志賀直哉、江戸川乱歩、角川源義等錚々たる面々。昔読んだ『父、こんなこと』でも思ったが父露伴との関係が何とも羨ましい。亡くなるときに「それじゃ、もう、おれ死んじゃうけどいいかい?」と言った父露伴。娘に対する深い愛情と人としての可愛らしさを感じた。黒柳徹子との対談は泣き笑い。文さんの映像を観たいと検索したらYouTubeで肉声を聴けた。
2020/06/29
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