漱石を読みなおす (岩波現代文庫)
漱石を読みなおす (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
ころこ
従来の時代精神を仮託したテクスト読解や文献学的手法ではなく、カルチュラル・スタディーズ的な「読みなお」しになっています。政治性が強く、価値の押し付けの部分もありますが、全体を通して見事としか言いようのない本です。前半は唯物的な着眼点から従来の漱石像を解体しています。池辺三山との朝日新聞入社のやりとりに、日清戦争後の報道の均質化による「小新聞」としての生き残りを模索する姿が描かれます。平民出身の漱石と士族出身の三山の微妙な関係は、既にその頃には衰退の運命にある「大新聞」に所属していた子規との若き日の対立や後
2020/11/06
まさにい
『吾輩は猫である』がこんなに深い読み物だったとは思わなかった。漱石が朝日新聞に入った当時の朝日新聞と日露戦争の関係、日比谷焼打ち事件に朝日新聞が影響を及ぼした関係は知らなかった。これは、商業ジャーナリズムの限界を示している。この本、只者ではないなぁ。読んで良かった。
2023/06/11
ken
漱石の出生、漱石と正岡子規、漱石とロンドン留学、漱石と性別などなど、いろんなテーマによる論考が収められていて、作品を読む上で参考になる1冊。明治時代がどんな時代なのかを踏まえた上で、漱石の人生や作品について触れるので、作品が生まれた必然をしっかりと理解することができる。改めて、漱石という人間と、その作品の魅力について考えさせられた。
2021/08/06
かしこ
金之助の金はお金の金。漱石がいかにお金に苦悩したか、その面から漱石を読み解いてました。子規と漱石の関係も、否定し合いながら、アイデンティティの危機や死の淵では求め合い、苦しさが溢れ深いです。
2016/12/28
masasamm
漱石研究の第一人者小森陽一氏の漱石研究入門書。わかりやすい部分、刺激的な部分が多くあり、勉強になります。一方では読みすぎではないかと思われる部分もあります。しかしそれは私自身の読みの甘さからそう思われるのかもしれません。この本自身も、漱石も何度も読むことが要求される本です。
2023/07/29
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