花のようなひと (岩波現代文庫)
花のようなひと (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
しいたけ
佐藤正午と牛尾篤が織りなす優しい本。花になぞらえた一本の小さな物語が、読み終えると花束に変わる。いつもコーヒーをのむ私が、紅茶をのみながら読んだ。牛尾さんの装画は懐かしさとともに私の胸にすっと入り込んでくる。出版と合わせて東京會舘にて展覧会が開かれたとのこと。行けなかったのは残念だが、春の陽射しの窓辺で公園の子どもらの声を聞きながら本を眺める時間も、かなりいい。
2020/03/04
esop
実家を出る前、いつも喧嘩ばかりしてるお姉さんがスイートピーを部屋に飾ってくれたらしいんですね、何も言わずに/花びらの開いたトルコ桔梗は、大きく口をあけて歌っているように見えます/人生には謎がつきまとう/そうだ彼女はこの花のような人だったんだ/君から離れたのではなくて、未来の君のほくへ一歩近づいたのです/でも三十の心構えができているということはその分だけ、未来を生きつづける勇気がわくということでもあると思う/先生は生理中だから残酷になってるのよ/恋愛の本質がもし「予感」にあるとしたらこの形容は的を射ている
2024/10/21
旅するランナー
女性の仄かに揺れる心情を、花々をあしらって描く2ページ短編集。牛尾篤の切ないくらい美しい銅版画と呼応して、素敵な一冊になってます。本棚に置くだけで、ワングレードアップする本が、972円と超お得!
2017/10/24
akio
そういえば「幼なじみ」は手元にありました。物語の切なさが癖のある作者のイメージを良い意味で裏切っていて、なおかつ挿画が素敵なのでこの先も手放す気にはなれないだろうな、と思う一冊です。本書の表題作は挿画のイメージがより強く、物語に添うようだったり、高め合うようだったり、ときにリードするようであったりと味わい深いです。何より、こんなにも機微に富んだ彩り豊かな物語たちを書く、作者の繊細な一面にはっとしました。
2017/10/23
奏市
文庫だが厚めの紙にカラーの挿絵で豪華。挿絵が洒落てる。大人の童話といった雰囲気の絵。ショートショート集『花のようなひと』と短篇『幼なじみ』から成る。前者はほぼ全篇花が出てきて、どれも女性が主人公。著者の作品の中では、初めて出会った作風。好きな作家さんだから贔屓してしまってるのかと自身を疑うくらい、短いのにあっという間に世界に入ってしまう。安らぐ。『ソフトクリーム』、『花束』が好み。後者の、小学校のクラスで先生の質問に手を挙げる挙げないの件、懐かしい女の子の記憶が蘇ってきた。「中村肉屋」か、地元感有り。
2020/04/16
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