夜長姫と耳男 (岩波現代文庫)
夜長姫と耳男 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
近藤さんのコミックは以前岩波で出された漱石の「夢十夜」があります。怖さはあまりなかったのですが幻想的なイメージはあった気がしました。今度は同じ岩波から坂口安吾の二つの短編を出されています。両方とも読んだことはあるのですがすっかり忘れてしまっています。この本の姫と耳男のイメージは大部異なっている気がしました(うろ覚えですが)。まあ近藤さん独自の作品として楽しみました。内容は残酷ですが、近藤さんの筆致で残酷さが薄れている気がしました。
2018/07/13
さらば火野正平・寺
坂口安吾の小説を近藤ようこが漫画化したもの。私は日頃、安吾贔屓を公言している者だが、この原作は未読であった。元は小学館から出た本だが、他の文庫より小さめな岩波現代文庫で読めて良かったと思う。私の掌の中の、大切な小さな物語になった。古代が舞台の残酷で切ない話。ラストはとにかく泣けてしまった。安吾が『文学のふるさと』で説いた事を実践した様な問答無用の寓話的世界。饒舌な安吾をセーブした近藤ようこの静謐が魅力的だ。読んだ人の大半は「耳男は私だ」と思うだろう。少なくとも私は「これは私の話だ」と思った。お薦めします。
2017/11/17
Vakira
近藤ようこさん、最近気になる漫画家。「ゆうやけ公園」や夏目漱石原作「夢十夜」が気に入ったので坂口安吾原作ではどんな感じ?っと興味が湧いて読んでみた。時代は平安時代の頃?「好きな物は呪うか殺すか争うかしなければならないのよ」仏師の怒りの感情が仏像に命を与える。気が入り込まなければ仏像ではない。芸術と命と死、姫と匠の仏師と奴隷女。「火の鳥 鳳凰編」、芥川龍之介の「地獄変」を思い出す。姫のムチャブリはオスカー・ワイルドの「サロメ」の様。淡々と絵は描かれるがその物語はかなり強烈。凄い物語を読ませていただきました。
2020/11/02
tomi
坂口安吾の短篇小説を、近藤ようこが漫画化。夜長の長者の一粒種として大切に育てられた美しい姫と、ヒダ随一の匠の弟子の青年・耳男との美しく残酷な物語。ハタ織り娘のエナコに耳を切り落とされた耳男をあどけない顔で見つめる姫。小屋の天井におびただしい数の蛇を吊るし、一心不乱にモノノケの像を彫る耳男。これを絵で表現されると生々しく恐ろしい。夜長姫曰く、「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ」。いやはや壮絶です。原作も読み返してみようか。
2024/08/31
harupon
原作の坂口安吾さんの「夜長姫と耳男」を読後、こちらの漫画も読みました。当然、物語の内容は同じですが、漫画で読むとストレートに恐ろしさが伝わってきました。耳男が作ったモノノケの像はなんともおぞましい気持ち悪さ、そして次に作った姫の顔を模した弥勒菩薩像は美しい、ラストシーンの美しく儚い姫の姿。近藤よう子さんは坂口安吾さんの「桜の森の満開の下」「戦争と一人の女」も漫画にしています。
2022/02/08
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