ハルコロ (2) (岩波現代文庫 文芸 339)
ハルコロ (2) (岩波現代文庫 文芸 339) / 感想・レビュー
ふう
ハルコロ(たくさんの食べ物)という名の少女が、結婚して母になり、おばあさんになるまで物語が続きます。恋心も母としての思いもわたしたちと同じ。ただそこには先祖から口承で伝えられてきた神々の話やしきたりを持つ、ていねいで独特の暮らしがあります。やがてシサム(和人)によって徐々に脅かされていく悲劇が近づいてくる…というところで物語は終わります。差別につながると、アイヌという呼称を使うことが憚られた時代もあったと解説にありました。忘れてはいけない、無かったことにしてはいけない。むしろ大切なこの国の歴史です。
2021/06/22
井月 奎(いづき けい)
国立博物館でアイヌ民族の資料を見たことがあります。素晴らしい技法で作られた衣装や生活用品の数々は、しかし色あせて生活のぬくもりは感じられませんでした。私の好きな奈良、そこでお会いする仏さまたちの枯淡の味わいはため息が出るほどに美しいのですが、古代仏教の熱は大分に冷めています。優れた物語は人々の思いや生活を時と場所を超えて瑞々しく私たちに教えてくれます。アイヌ民族が抱く神々や自然への思いの一端を自らの胸に、心に焼き付けることのできるすばらしい漫画です。良書、良作です。
2021/07/11
ちえ
ハルコロの子供世代にまで話は進み、場所も十勝地方へ広がる。(これで終わり…?)と驚いたが、萱野茂氏の解説で本多勝一氏はこのあと和人との戦いに繋がる第2部、第3部も構想していたとのことヲ知る。完成しなかったことは返す返すも残念でならない。
2024/08/09
まると
第2巻はハルコロの息子が旅に出て、さらにその息子がハルコロのコタンへと旅に出るまで。そして「コシャマインの戦い」前夜の不吉な兆しが現れて終わる。自分をオレと呼ぶハポ(母)やフチ(祖母)たちの女言葉と「~なんでないかい」という北海道弁が入り混じった会話が創作的ながら和みます。ユーカラの伝えられ方も描かれていて勉強になりました。著者あとがきで、鳥の鳴き声のイメージが湧かない著者に茅野茂さんが電話口で「フ~チ~トット~」と歌ってくれたという逸話も印象的でした。次回以降、和人との戦いがどう描かれるのか楽しみです。
2021/09/20
あきあかね
この続刊では、オペレ(おちび)だったアイヌ女性ハルコロは可憐な乙女へと成長する。ウナヤンケとの恋を軸に、美しい調べを奏でるムックリや、暗誦によって伝承されるユーカラなどアイヌの伝統文化が随所に織り交ぜられている。中でも、アイヌ民族の文化の精髄である、村の守り神のシマフクロウのイヨマンテ(神送りの儀式)は、詩情と余韻が漂っている。「冬の夜長を徹夜で過ごすイヨマンテの間 午前中は眠っている人が多く コタンも静かです」 「悪魔ばらいの先導として放たれた矢は 暗やみの無限の空間へと 本当に神の国までとどくかのよう
2023/01/30
感想・レビューをもっと見る