戦争 (岩波現代文庫 社会 155)
戦争 (岩波現代文庫 社会 155) / 感想・レビュー
ロビン
『レイテ戦記』『野火』などで知られる作家の大岡昇平が自身の来歴とミンドロ島での太平洋戦争、戦後について語った本。全体に病気になり上官から見捨てられたり、手りゅう弾で自殺しようとしたり、米兵を見つけても撃たなかったりする極限状態を含めて淡々と分析・描写している。これは大岡さんの、あるいは日本人の独特の諦念なのか。反戦の怒りは柄ではないのか。「どうせ殺される命なら、どうして戦争をやめさせることにそれをかけられなかったかという反省が頭をかすめた」とあるが、平和のために命をかける覚悟ということを考えさせられる。
2024/08/30
ジョニジョニ
目の前で大岡さんが話してくれているようで、親しみやすく、読みやすい。もうどうにもならない戦地で、自殺しようとして『「あばよ」っていって手榴弾をガチッと土の上の石に当てたら火を吹かないんだなぁ』なんていいかたが変に明るくて、それは“俘虜記”を読んだときにも感じた、考え尽くした人の達観からくる諦念、いや悟りともいえるなんて思いました。戦争を考えるのに、暗く重くなりがちなのは、自分が体験するつもりもない全く未知の世界だからであって、理解できないのはあたりまえ。でもこの人の本は、面白いですよ。
2021/08/15
刳森伸一
戦争を中心とした戦前から戦後までの口述による自叙伝に戦争に関する考察を加えた「語り下ろし」。戦争に関する考察は今でも十分に読むべき価値があり、色々と啓発させられる。
2018/08/21
hafen_
このような背景を持ったひとであったがゆえのこの視点だったのか。『俘虜記』『レイテ戦記』を読んだあとに読んで納得。
2017/06/23
てら
太平洋戦争を「1960年代におけるベトナム戦争くらいにしか受け止めていなかった」という著者の戦争観を語る。その後召集されフィリピンで米軍の捕虜になるという体験をしながら、価値観が変わったりしていないところに凄味がある。
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