子どもの本を読む (岩波現代文庫 〈子どもとファンタジー〉コレクション 1)
子どもの本を読む (岩波現代文庫 〈子どもとファンタジー〉コレクション 1) / 感想・レビュー
南北
著者の語る「子どもの本」とは「子どもの目の輝きを失うことのない大人の書いた本」であり、子どもはもちろん、大人も読む価値のある本である。読んだことがあるのは「飛ぶ教室」と「思い出のマーニー」だけだったが、心理療法の専門家である著者の読み方には感心するところが多かった。人間存在を考える上で心と体、それに両者に関わる第三領域の「たましい」が存在すると仮定すると、「子どもの本」の中にこの「たましい」について書かれている本があるという指摘は面白いと思った。シリーズになっているようなので、他の本も読んでみたい。
2021/05/19
大先生
【人間には、①心と②体、その両者に関わる第3領域としての③たましいがある。大人は常識にとらわれて「たましい」を見なくなるが、子どもは端的に「たましいの現実」を見る。ここに子どもの本の大きい存在意義がある。】とした上で、「飛ぶ教室」「思い出のマーニー」などの名作の中に河合先生が入り込んで、主観的に感じた「たましい」との接触を解説した本です。気軽に読み始めた本でしたが、予想外に深い内容でした。児童文学を舐めてはいけないですね。本書では9冊の本が紹介されていますが、「飛ぶ教室」がイチ押しのようです。
2023/02/09
roughfractus02
『銀河鉄道の夜』の講演の際、聴衆の1人に体の震えが止まらなかったと言われた著者は、賢治の名作は「どこか体に作用してくる」と述べる。ファンタジー(幻想)に属する児童文学の世界には象徴、魔法、錬金術等ユング心理学の鍵語に満ちているが、著者は心と身体の関係を読者に感覚から触発する点に児童文学の特徴を見る。本書を読むと『飛ぶ教室』の子ども達の喧嘩の場面は、二足歩行に行動を固定し、自我と言葉に世界を制限する教室空間に、子どもの心と身体が作る柔軟な「たましい」(ファンタジー)が反乱するように思える(9作の紹介あり)。
2022/12/08
MIHOLO
河合隼雄氏が選んだ児童向けと言われている本を選んだもの、児童だけではなく大人にこそ読んで貰いたい有名な物が紹介されてるけど意外に知らないのもあったし、子供の頃読んでたのに、覚えてないものもあった。長靴下のピッピの解説では、自由なピッピは強烈な逆転の思想を持ち既成の秩序を絶対的と思ってる人に強いパンチを見舞うとある。そうだったのか、ピッピ(笑)映画にもなったマーニーも原作読んでみよう。
2015/05/04
フム
心理療法家河合隼雄さんの目を通して子どもの本を読むとこんなにも豊かな世界が広がるのかと感心する。それは河合さんが心理療法をする時と同じで、ひたすら相手の主観の世界を共有しようと試みることである。そうすることで、大人が見えない世界、常識にとらわれていては見えない世界に気がつく。作品には大人が眉をひそめるような子どもたちも登場する。『ヒルベルという子がいた』『長くつ下のピッピ』『思い出のマーニー』子どもたちの起こす問題も河合さんの言葉で語られると、意味のあることなのだと納得してとらえられるのがおもしろい
2017/08/05
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