物語とふしぎ (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 3)
物語とふしぎ (岩波現代文庫〈子どもとファンタジー〉コレクション 3) / 感想・レビュー
南北
児童文学における「ふしぎ」を自然や人物・時間などをキーワードにしてさまざまな作品について心理療法と絡めながら解説している。児童文学というと子どもの本と思われがちだが、単純に読んでいて楽しいというだけでなく、「たましいの真実」に触れることで現実と立ち向かう力が得られるという点でも大人に読んでほしいジャンルと言える。取り上げられた作品には魅力的なものが多く、読んでみたいと思うような本がいくつもあったという点でも読んで良かったと思う。
2021/11/23
たびねこ
「ふしぎ」をキーワードに海外の児童文学を紹介している。「不思議の国のアリス」のうさぎの穴、「トムは真夜中の庭で」の裏庭のドア。穴もドアも「日常の世界」と「異質の(ふしぎの)世界」とを結ぶ「通路」の役割を果たす。「通路」の先にあるふしぎの世界は非現実なのではなく、心の奥底を反映した現実そのもの(内的現実)だと、心理療法に携わる河合隼雄の世界が展開されていく。世界は一定でなく、じつに多様な解釈が成り立つ。現実にがんじがらめになっている人をときほぐす物語の力にあらためて気づかされる。
2014/09/18
roughfractus02
古代の物語は未知の情報を伝達する技法であり、誰かが出発し、冒険し、帰還して未知の情報を伝える構造は重要なフォーマットだった。一方、古代人が人同士の行う水平的伝達より神や異界との垂直的伝達の方を重視したのは、この世界がなぜあるのか?という答えのない問いに対処するためだったようだ。著者は子どもが問う「ふしぎ」の中に答えのない存在論的な問いを見出す。子どもは自らも含む自然、人物、町や村、時に「ふしぎ」を感じ、物語はそれに答えるのでなく、そこで生きる指針を与える。著者は児童文学に「ふしぎ」への様々な対処法を読む。
2022/12/10
日々珠
渦巻く気持ちを名付けられない時に読んだ。切実さを分かってくれる、作者と自分以外の、解説者という存在にほっとする。隅々まで信頼できる。しかし今の自分には児童文学のたとえだと、伝えたい人に伝わらないのだ。申し訳ないが別の本を探すべき時がきた、と本を棚に戻す。私個人の宝の部屋を後にした気分。次はどこへ行くべきか。
2014/02/01
西島嵩人
いっけん、「子どもの読む物」として扱われがちな、児童文学の、豊かさ、たましいについて語っている真実性をふかく追求。児童文学で読んでみたい作品がたくさんできたぞ。
2024/04/21
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