喪の途上にて――大事故遺族の悲哀の研究 (岩波現代文庫)
喪の途上にて――大事故遺族の悲哀の研究 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
ふたば
ちょっと想定していた内容とは異なっていた。 精神科医の立場から、思わぬ災害で大切な家族を喪った人たちに向き合い、その精神状態の変遷、死を受け入れていく過程、受け入れられなかったケースなどに淡々と言及する内容を期待していたのだが、どうもそういうことではなかったようだ。遺族の近くに居る存在として、同じ目線から航空会社や、当初検死を担当し、身元確定に奔走した医師たちを糾弾するに等しい内容だと思う。著者自身は、当然ながらその現場に存在していない。遺族を通しての目線でのみ当時を見ている。
2023/09/01
モリータ
◆図書館本を2023/2/27に読了。◆単行本1992年岩波書店刊、文庫版(本書)2014年岩波現代文庫刊。相違は文庫版序文の有無のみ。◆本文は興味深く読み、当時の著者の真摯さにも疑いはない。が、文庫版序文には次のような反米感情に基づく「極めて政治的」で自己の言説の影響を過大視して屈折した記述があり、(文庫版刊行当時から現在の)著者の見識を疑わしくさせる。政治的起源を持つからといって現に精神医療の一部を構成している概念を現実の精神的危機にある人に合わせて非政治化しようとするのではなく、自己の言論の責任(続
ゆーや
2014年32冊目。 1985年8月12日の日航ジャンボ機墜落事故を中心として、遺族の悲哀の状況や、現代の喪を取り巻く問題点を分析する。 遺族のインタビューはあまりにも生々しく、心を打たれずにはいられない。 部分遺体しか見つからない故人の破片を必死で捜し求める姿には、読み進めるのが辛くなるほどだった。 悲哀のステージの移行や、それぞれのステージで訪れる症状の話しなど、「あぁ、そうだったのか」と理解してもらえている気持ちになり、救われた部分が大きい。 これは一生手元に置いて、何度も読み返すことになる本。
2014/05/13
can0201
85年の日航機墜落事故の遺族の話を中心に書かれた、元々は92年に刊行された本の文庫版。ただでさえツライ「死別」が、「大事故」が絡むことで複雑な様相を呈し、そもそも別れ切れなくなる。普通の(大事故ではない)事故死も受け止めるまでは時間がかかる。哀しみにタイムラグがある。それが賠償金など現実的問題にも追われ、そもそも「死」に向き合えない、受け入れられない状況だったら。割り切れない気持ちとどう折り合いをつけていくのか。遺族に寄り添い続けた精神科医が書き下ろした記録。
2015/03/09
tomomi_a
ひとがそれぞれ生きる速度について、慎重に丁寧に、できる限り何も置き去りおざなりにしないように、しないように自ら生きてあるために、書かれたように見える。いちばん苦しんでいるひととともにあるための、これは技術ではなく信念を問われる本だと思った。ただ、これを読んで問われて躊躇うことができるひとは、あまりきっと権力を志向しないのだろうな。 悲しみ方の千差万別は、生き方の千差万別でもあって、引きずられるように思い出すことがあったりつらい読書だったけれど、素晴らしいお仕事だなってほんとうに思う。
2014/11/21
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