老いの空白 (岩波現代文庫)
老いの空白 (岩波現代文庫) / 感想・レビュー
どんぐり
鷲田清一の‶老い″をめぐる論考。これは哲学する人が書いた本なので、老いつつある自分に慰めを求めたり勇気を得ようとして読むと、期待値から外れてがっかりするかもしれない。「老い」には成熟のモデルがなく、無力、依存、あるいは衰えそういうセルフイメージのなかでしかないこと。<老い>をネガティヴにとらえるのは、産業社会の特殊な思想であり、狭い固定観念だということを論じている。「<老い>の時間-見えない<成熟>のかたち」の章までがその中核部分で、中盤以降の「ホモ・パティエンス―べてるの家の試み」の章から「できる」とい
2016/03/25
ニッポニア
空白を作る、新しい発想ですね。誰にも訪れるであろう「老い」について語り下ろしたという本。アンラーンとして、空白を作ることは有効です。以下メモ。老いの意識はその外にあるものの老化という事実からくる。人間にあっては近いもの、大事なことほど見えにくい。24時間要介護の場面でさえ、ケアは本当は双方向的。水泳教師に微笑み、手を振る老婆の姿、何気ない日常に心が締め付けられる著者の感性よ。
2023/03/18
しゅん
高齢化社会へと邁進する日本において、「老い」の場所がない。介護問題や5080問題という言い方に顕著なように、「老い」を「問題」としてしか扱えないことが本当の「問題」なのだ。書名にある「空白」とは、老いを捉えきれていない社会の気配を表したものだ。「老い」は普段意識されず、「できない」という認識と共に間欠的に表れる。その「できない」を、効率的処理能力の欠落ではなく、呆け=惚け=エクスタシー(=外へ出ること)の体験として、他者と一つにならないまま共に生きるための感覚として、捉えなおしていく。
2023/01/05
しゅんぺい(笑)
鷲田さんの本はときどき、これしかない、というくらいに読みたくなる。本書は新しく文庫になった本ということで偶然読んでみたけど、思いもよらず、鷲田さんのなかでもいいなぁと思えた本。 こういう言葉を待ってたって、読んだあとでそんなふうに思える言葉に出会えたから、もうそれだけでこの本を読めてよかったと思う。そう、成熟とか、老いというのが、本当にせまい意味でしかいまはとらえられてないと思う。老いの意味を積極的に見出そうとする、そんな作業が必要であって。
2015/03/29
けいしゅう
老いを問題としてしか捉えられないのは生産力主義に基づく狭隘な人間観であるとし、そもそも人は支え合わなければ生きていけないことを踏まえて、老いることにポジティブな意味を見出そうとしています。なぜだか井上大輔の名曲中の名曲「めぐりあい」がずっとフラッシュバックしてました。
2018/02/05
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