キュア cure
キュア cure / 感想・レビュー
Tui
医学と人の関係性を問う作品。ガンと宣告されたとき、人はなにを思うか。また人体にとってガンとは一体どんな存在なのか。そこから人の死や、身体組織の神秘性について深く深く物語は進んでゆきます。挑戦的なテーマですが、語りたい内容を詰め込みすぎたのか物語としては破綻気味です。怒涛すぎる展開に呆気にとられそうになるのを我慢しつつ、エッセンスを汲み取る読み方をすれば、刺激的な知見を得られるでしょう。きっと大事なことが書かれている本。ただ、物語ではなくノンフィクションかエッセイにまとめてくれた方がよかった。
2016/11/20
カピバラ
アンテナ、モザイクに似たものを感じた。がん患者の口臭が匂う描写が端々にあって、リアルさを感じてしまった。死に向かう様子が切実で、ラストではしんみりした気持ちに・・・。
2015/04/27
安南
癌とその治療(キュア)の物語。電波三部作を思い出す。重く、グロテスクな描写に血の気が引く。貧血した体に熱風を吹き込む強烈なイメージの奔流。数ページ読むだけで落ち着かない気分にさせられ、息を整えながら少しづつ読む。体力を消耗する、なんとも自虐的な読書の時間。登場人物達は作者の情熱に押しつぶされているようだし、相変わらず繊細さに欠ける文体。作者にとって、小説は手段でしかないのかもしれない。それでも、貪欲な知識欲と伝えたいという熱過ぎる思いにはひれ伏すしかない。おもしろかった。
2013/02/28
はなすけ
10年ぶりに再読。癌になった医者が化学療法や手術を拒む、という記憶しかなかったが、今話題の「安楽死」「尊厳死」も内容に絡んでててタイムリーだった。 スピリチュアル的な要素も強く、好き嫌いが分かれるかもだが、私は好きです。 むしろ、シャーマニズムへの関心の高さなど、当時よりも今の方が時代に合ってるのではないだろうか。 終盤“日本近海で原発事故があり、人々のがんへの恐怖が高まってる”みたいな文章があって今にしてみると予言めいてる。
2020/07/28
爽
田口ランディさん初読み。病院という閉鎖空間の中で、いのちを救うことが機械的になっている。彼の一族の力は治療という枠を超えたもの。特別であるということよりも、抜け殻のように生きるのが本当に生きることといえるのか、遺伝子レベルで問いかけている気がする。いのちの源、太古からの全ての流れのもとにあの力があったのなら、彼はそのために生まれた。始まり方も終わり方も心に響く素敵なものだった。
2013/09/16
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