七夜物語(下)
七夜物語(下) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
エンディングは抒情的で、この長い物語の終わりにふさわしいものだった。しかも、そこには一抹の寂しさを残しながら。ただ、物語全体としては上巻ほどの勢いには乏しいか。特に、光と影との対決は徹底性を欠くようだ。本書はル=グインの『ゲド戦記』(おそらくは川上弘美さんの愛読書)の影響下にあると思われるが、この物語にあれほどの厳しさを求めるのは酷だろうか。もっとも、ゲドが魔法修行者であったのに対して、この物語の主人公たちは何も特別のものを持たない小学生であるという点には十分に特質が発揮されているとは言えそうだが。
2012/12/30
kishikan
上巻の4夜までの冒険では、様々な体験による子ども達の成長を描いていたけど、下巻の5つ目の夜からは壮大な冒険ファンタジー。世界を救うためさよちゃんと仄田君が一生懸命戦って、まるでナルニアの映画を見てるみたい。そんなスケールの大きな話なのに、家族の愛情や友情、妬みや虚栄心など、様々な感情までも細かに描写しているところはすごい!加え、SFのような虚の世界(パラレルワールド?)に僕らを連れて行ってくれる構成と文章力に圧倒されます。本当は、まだ終わらないで、と思うのですが仕方がない。最終章の「夜明け」には痺れます。
2012/11/23
ヒロ@いつも心に太陽を!
読み終わったあと、まるで自分もさよや仄田くんと一緒に七つの夜を旅してきたかのような充実感と冒険が終わってしまったことへのわずかな寂しさ、そしてなんだかちょっと泣きたくなるようなせつなさが残った。もしこの本を10歳の頃に読んでいたら、私は何を思っただろう。この話は決して「めでたしめでたし」な物語ではない。でも、読まなきゃよかったと思う物語でもない。結構大事なこと、書いてあるよ。忘れてた何かに気づかされることもあるよ。それはもちろん、人によって違うだろうけど。私は『七夜物語』に出会えてよかったよ。
2012/12/02
ひめありす@灯れ松明の火
七つの夜の物語は、同時に七つの昼の物語。美しい夜のお伽噺、最後の頁を捲り終えて胸に残るのは安らかで寂しい、子供時代の鎮魂歌。どちらが主というわけでなく、互いに寄り添い補い合う昼と夜。昼の経験が夜の物語を作り、夜の冒険が昼の羅針盤になる。さよと仄田くん。美しい子供とみすぼらしい子供。ぴったりのエプロンもちびた鉛筆もどちらも主人公であり、どちらもあの頃の私達だった。空想の翼を豊かに羽ばたかせた子供の時代が終わって大人になった今も、光を紗に透かすカーテンの向こう側。チェリークラフティと大きなネズミが笑っている。
2012/12/23
財布にジャック
下巻でどんどん凄い展開になりました。この主人公達と同じ年代の子供達が読むには、ちょっと難しい奥深い内容な気がします。明るくて楽しいファンタジーという訳ではないので、どんな子供にも嵌れるとは限らないかなぁとは思いますが、辛くても大変でも幼い頃や若い頃の冒険は魅力的と思わせる何かがありました。図書館でその場で読んだ為、せっかくの酒井駒子さんの挿絵をゆっくりと鑑賞する時間がなくてそれだけが心残りです。
2012/09/12
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