ウエストウイング
ウエストウイング / 感想・レビュー
みっちゃん
読友さんのつぶに心惹かれて津村作品、初読み。とても良かった。古ぼけたテナントビルの物置部屋に「秘密の休憩所」を見つけた、お互い顔も知らない3人の「文通」と「物々交換」3人とも生真面目で不器用で、だからちょっぴり生き辛くて。ちょっとクセのある、でも善良で愛すべきテナントの住人たちが出くわす大小様々な艱難辛苦。最後のまさに存亡の危機!の事件にもお互いそうとも知らず「協力して」一件落着。ふう、良かった。胸にあたたかなものがじんわり、と広がっていく。
2022/03/03
ちょろこ
程よいホッと感の一冊。この作品も良かったな。ネゴロ、ヒロシ、フカボリ。ちょっとしたもやもやを抱えている接点のない三人。この三人がどう動きどう交わっていくのか…。淡々と紡がれる世界に流れるちょっとした温もりが良い。見えない誰かへの物々交換も、書き置きも、ボート郵便も、成り行きとはいえそこに自然と相手を慮る気持ちが見え隠れしている感じが良い。消しゴムハンコを押すネゴロのシーンが好き。そこに明確な心情が描かれていなくとも、心情が伝わり入り込んでくる気がした。熱すぎずぬるすぎず、程よいホッと感に包まれる交流物語。
2022/04/19
めろんラブ
建物というのは無機的なものだけれど、そこで息づくひとを意識すると、途端に温もりを帯びて感じられる。本書は、老朽化の進んだ「椿ビル」内のオフィス・店舗・学習塾・・・で空間を共有する人々のやや倦んだ日常を描いている。とはいえ、そこにある閉塞感を暗澹と、ではなく、むしろ清明なイメージ。津村さん独特のニッチなところを突いてくるユーモアも健在で、ファンにはたまらない一冊なのでは。登場人物各々のちょっとした成長にあずかる椿ビルに、停滞しているひとの背中をそっと押す神様の姿をみたような気がして、ほんのり温かい読後感。
2015/08/17
なゆ
取り壊しが噂されてる古いけど趣きある雑居ビル、椿ビルディング。そこで働いたり通ってくる人々の人間模様、そしてビル存続の行方。四階の隅の物置場をサボリスペースにしている、お互い顔も知らない3人のゆる~い交流が面白い。幽霊さわぎの顛末は、ありそうで笑える。『ワーカーズ・ダイジェスト』『とにかくうちに帰ります』『八番筋カウンシル』などを思い浮かべるところもあって、総集編という感じにも読めた。ラスト、重機動くな!ですね。やっぱり津村さん、良いです。
2012/12/04
あつひめ
平凡な中に居ても、自分の中で穏やかに過ごすことができないのが世の常。自分だけの居場所を密かに見つけた時の高揚感。同じような感覚でその場を訪れる人がいると知った時の心の揺れ。今までに出会ったことのない展開だった。が、やはり中だるみのように読むペースが遅れてしまった。サラリーマン、OL、小学生。普通で考えたら接点が生まれなさそうな関係が面白い。少し、盛り込み過ぎたかな?という気もしないでもないが、楽しませてはもらった。
2013/04/14
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