荒神
荒神 / 感想・レビュー
yoshida
時は元禄。奥州の隣り合う小藩、永津野藩、香山藩に「怪物」が現れ村々を襲う。地図をみると私の住む福島県。舞台は郡山市の辺りか。「怪物」の正体は香山藩が永津野藩との関ヶ原合戦に備え、呪術で作った「土御門樣」だった。人の造りし「土御門樣」は関ヶ原では動かず。100年の時を経て人の性を、業を蓄え動きだす。舞台が福島県。「土御門樣」が人の造りしモノだが暴走するのが「原発」を意味するように感じる。本編では「土御門樣」を造りし一族の子孫が食い止める事に成功。人間の持つ欲や性、業や恨みを巧みに描く。充実した読後感に満足。
2016/04/26
紅はこべ
相変わらず宮部さんは年寄りにきちんと躾けられた10歳前後の賢くて心根のまっすぐな子供の使い方がうまい。この作品で魅力的なのはきちんと子供時代に大人から教育された人、悪役はそれを拒んだ人。弾正は結局大人になりきれなかった人なのかな。怪異は人の心が生むものなのだろうな。地図から見るとこの舞台、現代の福島あたりみたいだけど。小平良山、大平良山って、何となく安達太良山を連想するけど、関係ないだろうな。そんな怖い山じゃないし。
2015/08/24
takaC
6章中4章まで読み進めたまま何年も放置していたのを先月読友さんの読了報告を聞いて再開する気になり巻頭から通しで読んだ。少し前に内田有紀主演のTVドラマを観たのが今回は概ね良い方に作用した。小説では封印された怪物の絵をドラマでは視聴者全員見ちゃいましたね。
2018/05/03
hiro
簡単に言えば将軍綱吉の時代の人も食べてしまう化け物を退治する話。疫病も流行っている、東北の山間の隣り合いながら反目しあう主藩永津野藩と支藩香山藩の境に、その化け物が現れる。分かり易い悪役の永津野藩主の側近曽谷弾正、弾正と対象的なその妹朱音、それに謎の絵師や居候の用心棒に、両藩の武士、住人たちなど、登場人物一覧が必要なほどバラエティに富んだの登場人物が出てきて、誰が、どのようにして化け物退治をするかが楽しみに、この500ページを超える長編を最後まで退屈することなく、ワクワクしながら読むことができた。
2015/01/31
文庫フリーク@灯れ松明の火
「荒ぶる神」で浮かぶのはスサノオノミコト。宮部さんの「荒神」は人の咎・穢れが実体化した怪物でした。時代小説と言うより伝奇小説のよう。映画『ジョーズ』のように、最初は生臭く妙に暖かな風の描写から始まり、徐々にその醜悪な姿を現わして行く、飢えて怒り、怨みに燃える怪物<土御門>。鍵を握ると思われた、雁字搦めに封印された絵馬が、全く別の重要な顔を見せ、山神様の使いの如き下男・やじにもサプライズが。細かく張り巡らされた伏線といい、これが新人作家の作品ならば激賞ものです。逆に言えば、私が宮部みゆきさんに期待する→
2014/09/21
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