如何様 (イカサマ)
如何様 (イカサマ) / 感想・レビュー
こーた
おなじ小説を間をおいて読んでみると、あれこんな話だったっけ、であるとか、まえはもっとおもしろかったのになあ、とか、その逆であるとか、そんなふうにおもうことがある。あるいは絵を観ていて、横から見たり正面に回ったり、近づいたり離れたりしていると、まるでちがって見える瞬間がある。おなじ絵が、である。人の顔はどうか。そもそも私たちは人の顔というものを、ちゃんと見ているだろうか。本や絵はひとたび描かれたら変わらないかもしれないが、人の顔は変わる。ほんとうにそうか。変わってしまったのは、あなただろうか、私だろうか。⇒
2020/01/09
starbro
芥川賞連続ノミネートの2作に続いて、高山 羽根子、3作目です。『模倣』と『坂』の短編2作、オススメは、表題作『如何様』です。本作は、芥川賞受賞候補にはなりませんでしたが、近い内に著者は、芥川賞受賞と相成りますでしょうか?
2020/01/18
さてさて
『人は、まったく同じものがふたつ以上あると、ひとつを本物、残りを偽物と決めないと落ち着かない生き物なのかもしれませんね』。私たちは本物と偽物ということをどんな場面でも意識するように思います。この作品では、そんな単純な割り切りこそを問う物語が描かれていました。戦後の空気感の描写によってなんとも言えない時代感に魅了されるこの作品。帰ってきた貫一に隠された真相を追う『私』視点の物語に、ミステリアスな雰囲気感を楽しめるこの作品。「如何様」という書名が形作る独特な雰囲気感の物語世界に次第に魅了されていく作品でした。
2023/08/31
ケンイチミズバ
多くの人が戦地から変わり果てた姿で帰って来る。軍服の一部や南方の石ころだったり。が、男は、五体満足ながら別人で帰還した。戦争は人を変える、戦争では多くの顔の知らない者同士が殺し合った。彼に限らず、あの後、変わらなかった日本人がいるのかねという言葉には大きな説得力がある。戦地で入れ替わった別人でもいいと思える新妻も両親もあの時代ならそう受け入れられたのかもしれない。日本全体があれからリセットされたのだから。本物を知らなければ贋作をとがめる意味すらないし、日本はウヤムヤのまま今の日本を本物の日本だとしている。
2020/01/14
モルク
大戦後復員してきた男平泉は、家族も彼とわからぬほど顔が変わっていた。果たして彼は本物で戦争が彼の容貌まで変えてしまったのか、それとも平泉にばけた別人なのか、調査を依頼された主人公。最後まで真実はわからないが、平泉の妻タエのおっとりした無邪気な様子が可愛らしい。丘の上で最中を食べ、どこの国のものともわからぬお札を投げるシーンがいい。
2021/01/23
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