ペッパーズ・ゴースト
ペッパーズ・ゴースト / 感想・レビュー
ヴェネツィア
いつもながら疾走するスピード感の文体。ただ、今回は「先行上映」のアイディアに頼りすぎ、それに通俗ニーチェを持ち込んで、後は野となれ…といった、いささか投げやりとも思える構想。もう一つのアイディアである、小説内小説と小説との混淆といったメタフィクションめいた構成はそれなりに機能してはいるのだが。また、人物造型においては中学校の国語教師の檀先生を軸に据えたことが、かえって小説の展開をも拘束することになったのではないだろうか。他の人物も含めて、井坂作品にしてはいささか影が薄いようだ。
2023/12/01
starbro
伊坂 幸太郎は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、ニーチェ的哲学エンタメ・テロ小説でした。著者が興味のあることや好きなもの、心配なことや、怖いことを詰め込んだせいか、消化不良でキレがない感じでした。 「アメショー ハラショー 松尾芭蕉」(苦笑) ネコジゴ(猫虐待者)は許せません(怒)アメショーは、伸びるのに、ロシアンブル(ー)が伸びないのが不思議でした。作中の天童をリアルの巨人軍に存在させたいです。 https://publications.asahi.com/peppers_ghost/
2021/10/27
パトラッシュ
飛沫感染した相手の未来が少しだけ見えてしまう、中途半端な予知能力を持った教師という設定がユニーク。あるよりもない方がマシな力に振り回されながら、懲りずに教え子絡みの不審な話に巻き込まれてしまう。そこに別の教え子の書いた小説とリアルが微妙に重なり、どちらに自分がいるのかわからなくなるドラマが面白い。ネコジゴハンターや自爆テロ集団ら脇役も個性豊かで、シリアスとハチャメチャが程よく融合した良質のエンタメを堪能した。最後で東京ドームが建設されていない世界線なのが明らかになるが、ストーリーに加える意味があったのか。
2022/07/05
bunmei
伊坂氏の本書のメッセージカードに、彼の好きなモノ怖いモノを全部詰め込んだとあるように、自らが認める伊坂ワールド全開の作品。人の未来が予知できる力を持つ中学校教師を主人公として、猫を愛するお仕置き屋の不思議な小説から端を発した登場人物が、現実世界に現れ、テロの被害者の会による拉致・監禁事件にも巻き込まれ、現実と空想が入り乱れた世界観で物語は展開。そして、人質籠城爆破計画へと結びついていく。前半から意味不明な布石をたくさんばら撒き、一捻りも二捻りもしながら回収していく作風は、伊坂作品の真骨頂とも言える
2021/10/12
うっちー
稀有な伊坂ワールド全開。ニーチェの世界感は自分では宿題です
2021/10/18
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