愛という名の切り札
愛という名の切り札 / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
なんとも言えない独特な作風にすっかりハマってしまった谷川さん作品ですが、ちょっと本作はあまりしっくりこなかったかなと。「結婚」とは、「夫婦」とは、「離婚」とは、「パートナー」とは、そして「家族」とはとなかなかシリアスなテーマがてんこ盛りで綴られる一冊ですが、結局自分的には共感できる登場人物がちょっといなかったのが残念なトコです。人それぞれ、色んな考え方があるので、行動や言動はもちろん自由ですが、何をやってもかまわないのかとなると、決してそうではないのかなと。読むタイミングがちょっと合わなかったのかな。
2022/09/23
Kei
作曲家を見出して、世にだした所で、好きな人ができた、と離婚を迫られている恋愛至上主義の40代女性が主人公。対比して、20代の好きな人や、その叔母、60歳の専業主婦のステレオタイプの女性、その娘を交えて、結婚とはなにか、愛とはなにか、が大上段に語られる。裏切ったことに対する罰則はあるが、愛さないことに対する罰則はない、という結婚の罠が怖しい。そして、無自覚でありながら、様々な結婚感を見て思いをはせれる、主婦の目線が一番鋭く、こんな人々が、日本の社会生活を支えているのだ、と実感する。芸術の罠も秀逸。良書です。
2022/11/05
いたろう
小説の中で、「結婚とは何なのか」という問いが、何度も発せられる。結婚に関するいろいろな考え方、結婚のメリット、デメリット。定年退職で家にいる夫をもて余している百合子は、今まで結婚に何の疑問も抱いて来なかった。一方、百合子の娘で、30歳の香奈は、恋人はいるものの、結婚する気は全くなく、百合子はそれを理解できない。そして、不倫をしている夫に離婚を迫られている梓は、離婚に応じるつもりがなく、その夫と不倫の関係にある夏芽は、結婚を強く望んでいる。それぞれの行き着く先は? 結婚とは何かについて、深く考えさせられる。
2022/09/22
sayuri
谷川さんの作品を読むのはこれが三作目。今回のテーマはズバリ『結婚』。谷川作品に共通して感じる「大人の本音」は本作でもリアルに表現されている。当たり前のように結婚した百合子、心変わりを理由に作曲家の夫に離婚を迫られる梓、結婚にメリットなしと非婚を選ぶ百合子の娘・香奈、事実婚で愛を貫く理比人、様々な愛の形が描かれる。私も百合子の様にメリット・デメリットなど何も考えず当たり前の様に結婚してしまったので、今ならあの時の自分に良く考えるように伝えたい。正解がないから難しい。結婚制度について今一度考えさせられる作品。
2022/08/22
pohcho
作曲家の夫からに離婚を切り出された梓。夫は家を出て若い女性と暮らし始める。離婚に踏み切れない梓の揺れる心情と専業主婦の百合子の視点が交互に描かれる。メリットがないから結婚しないという百合子の娘。梓の夫と暮らす百合子の姪に不倫の暗さはなく、梓に近づく青年・理比人も現れて。さまざまな愛を描き、愛とは結婚とは何かを問いかける小説。こんなにも愛について考え続ける作品は他にはない気がするが、考えれば考えるほどわからなくなるものだなとも思う。仕事とプライドという話もあり。これもまた答えの出ない問い。とてもよかった。
2022/08/23
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