眼の探索
眼の探索 / 感想・レビュー
寛生
【図書館】「持てるあらゆる言葉を用いて」と始まる。不謹慎だろう、だが、どうしても本書は辺見が脳梗塞で倒れ癌に侵される前に書かれたものだろうという印象を拭えなかった。文体の肌触りが違うと言えば聞こえがいいかもしれないが、脳梗塞と癌の後の文の紡ぎは、まるで自身の傷ついた躰から迸る血で書かれたようであり、読み手は何かキリストの血によって自身が救われるか否かの瀬戸際で、なぜ救われたいかも判らないまま祈り聖餐にあずかるかのようだ。そして、間違いなく本書からも闇の中で死刑により絞首刑を受ける人の頸る音が響く。
2014/11/26
蘭奢待
蔵書の整理中にふと手に取った。早いもので18年ぶりに再読。初読当時から自分の思考が随分変わったことを実感。先日オウム真理教の死刑囚が6 人、日を置いてさらに6人が執行された。平成末年を目前にし、自民党総裁選を控え、政治の爛れが報道され、西日本では大雨による大洪水。台風12号は南洋から関東をかすめて左旋し、台風21号は関西都市部に未曾有の強風被害をもたらす。辺見庸の視点は大切である。
2018/09/17
魚53
物事を見る目の確かさはもちろんだが、その文学的表現力の強さに惹かれる。文学は見たもののその先へ、より深く降りていくためのはしごなのだと感じさせられる。さすが!
2023/11/06
gacchaki
こころのなかの、やましい部分をさぐりあて「どう感じる?どう思う?」と執拗に問うてこられるような印象であり、緊張しながら読んでいた。「ひらひらと優雅に宙を舞っていた蝶が、いきなり凶暴な蜂へと変身し、攻撃するかのよう」と例えればよいのか。15年前の新聞連載が元となっている本だが、古さをかんじない。近所の図書室の蔵書。
2012/11/05
メルセ・ひすい
朝日新聞コラムより編纂 ・一切の形式を無視し、一切の形式を動員し、怖じない作家の視線が全風景に異を唱え、時代の危機をあぶり出す。新ガイドライン、永山則夫死刑問題から言葉の退化まで。
2009/01/01
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