陰陽師生成り姫
陰陽師生成り姫 / 感想・レビュー
れみ
安倍晴明と源博雅の登場するシリーズの、ふたりの逸話が幾つも紹介される前半から、短編の「鉄輪」をベースにした後半の物語へつながる長編バージョン。博雅の、かつて自分の吹く笛を聴きに来ていた姫との思い出が、12年の時を経て迎える切ない結末…。映画のなかでも描かれているエピソードで、映画は映画で良かったけど個人的にはこっちの方が好き。最後は泣けた。
2015/03/07
おか
此方の本は 朝日新聞に連載された生成り姫の長編版です。何度読んでも この作品は鬼となる徳子姫の哀れさと 博雅の優しさに打たれる。博雅は云う「自然の全てが愛おしい、愛する人が時を重ねて 容姿がどう変わろうとも その皺も肉体の弛みも全てが愛おしい」人を愛するということの真髄だと思う。そして徳子姫が羞恥心の極みで生成りになった時の彼女の心持ちは察するに余りある。人は誰しも心に鬼がいる、それを表に出すか出さないかは その人次第。最後の徳子姫の死の場面 又しても 泣かされた。それにしても 馬鹿な男は、、、笑
2017/02/16
ぐうぐう
『陰陽師』初の長編作品において夢枕獏は、晴明ではなく博雅をクローズアップして物語を編もうとする。博雅が才人ホームズにおける凡人ワトソンではない証明をしようとしているのだ。確かに晴明は事件を解決はする。しかし、そんな晴明自身を支えているのが博雅であることが、本作を読むとよく理解できる。拾遺集に詠まれた歌「春はただ花のひとへに咲くばかり もののあはれは秋ぞまされる」に対して博雅は「草の枯れゆく秋よりも春や夏の盛りの頃にこそ、もののあはれというのをおれは感じてしまうのだよ」と異議を唱える場面がある。(つづく)
2024/09/09
白火
元になった「鉄輪」は実は私が初めて読んだ「陰陽師」シリーズなのでなんだか感慨深い思いで読了。この長編版も好きだな。博雅のそれは恋なのか。「恋」というにも何か別のものかもしれないな、とちょっぴり思ったり。
2015/09/18
ううちゃん
陰陽師長編。これまでの短編のいくつかが再構築され、深みを増した作品となっていた。短編では経験しなかった落涙を誘われた。人の心のなんと愚かで愛おしいことか。あとがきで作者が書かれていた通り、博雅が灯りとなって点っているのがしみじみと分かる。鬼であるそなたが愛おしい、と言える彼があまりに素敵だった。
2016/10/05
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