黒澤明の世界
黒澤明の世界 / 感想・レビュー
TCD NOK
黒澤明の一覧の映画評。七人の侍のような活劇からドストエフスキー原作の文学的なもの、社会的なもの、群像劇など、作品の幅広さもだけど、何を表現したいのか、そのためにはどう演出するか、どう役者に演技指導するかの徹底的なこだわりが凄い。なので、黒澤映画には同じような役者しか出てない。いや、出られないのだと思う。作品の幅が広すぎて、新作上映されるたびにこれは黒澤らしくないと批評する者もいたそうだが、あらゆるジャンルの映画に挑戦し続けた、生粋の映画人だと思う。自殺未遂していたことも驚いた。印象に残った映画は蜘蛛巣城。
2020/04/22
FK
ずいぶん昔に買ったまま読んでなかった。1969年に三一書房から出たものの増補改訂版。残念ながらこの1986年版では黒澤明の最後の三作品はカバーされてない。その後の増補版は出てないのかもしれない。それにしても一作一作の紹介の批評・批判は、私がもう一度観るときの参考になるだろう。もちろんいちいち覚えているわけではないが、もう一度観て、考えてみたいと思う。/ 黒澤明が、それら、社会的、人間的な状況の困難さをこそ強烈に追求したのは、彼が悪人にたいして強い関心をもっていたからであるにちがいない。(P.49)
2019/03/25
i-miya
ブルーノ・タウト 独建築家、1933-36 ナチスに追われ日本滞在、矢野正五郎、花井蘭子は門馬三郎の娘、短いショットと長いショット、悪に正面から立ち向かえる人=黒澤明、多田道太郎、藤田進 三四郎役、富田常雄、禅の思想。山本薩夫 コミュニスト、大河内伝次郎 矢野役、奴隷のような善人よりも自分が悪人であることを自覚しているほうがはるかにマシ、宮川一夫の撮影(1)やぶ、奈良の奥山の原生林(2)木津川の川っぷちの(3)淀川(4)京都の南西、向日町の近くの森、父と娘、マルメラードフとソーニャ。。。ドストエフスキー、
2006/09/14
るな
黒澤明監督の全作品を論じた渾身の映画評論。亡き父が佐藤さんの論考のレベルの高さに舌を巻いていた記憶も懐かしい。軍国主義に染め上げられた時代を生きた者ゆえの作品の捉え方があり、時代の空気感が映画の印象を左右することがよく分かる。ベスト作品の一つと思っていた「天国と地獄」の致命的な欠陥の指摘にも唖然とさせられた。シナリオ、カット割り、照明、構図、演技、音楽、テーマなど、あらゆる映画の要素に言及した上で衒学的に陥らず説得力のある論評になっていることに深い尊敬の念を抱いた。佐藤さんは、黒澤作品の最良の理解者だ。
2023/09/09
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