現代俳句の世界 14 (朝日文庫 げ)
現代俳句の世界 14 (朝日文庫 げ) / 感想・レビュー
Mayuzumi
金子の句は、こう言ってよければ、草田男の逸脱の鋳型へ、三鬼のダンディズムを放り込んで製られたような案配である。そこに氏の豪放磊落な、ホモセクシュアルな、万葉風な語りが加わり、力強い野生の血が十七音に脈打つ。他方、高柳は改行表記法を俳句に持ち込み、その批評的精神でもって、俳句形式の再創造をもくろんだ、謂わば預言者である。一句一句が、何か呪具を扱うような慎重さで配置されている。句全体が蛾を模るように改行されたものもある。この精巧に組み立てられたロマンチシズムの牙城は、失われたものたちの繊細な震えに閉ざされる。
2017/01/24
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