まぼろしの郊外: 成熟社会を生きる若者たちの行方 (朝日文庫 み 16-1)
まぼろしの郊外: 成熟社会を生きる若者たちの行方 (朝日文庫 み 16-1) / 感想・レビュー
林 一歩
酒鬼薔薇やオウムといった'90年代固有のトピックから展開した評論集だけに、さすがに今読むとかなり期限切れ超過は否めない。911や311を経た後で宮台のような中途半端な学者は不要だなと改めて思った次第。
2013/05/12
白義
社会学者としての宮台真司の仕事では上位に入る。というのも、本書が郊外を題材に社会学とは何かを実践的に提示し、さらに社会学の特徴上、それが本書を読む読者自身のあり得た生をも指し示しているからである。本書の一番のストーリーラインは、かつて、郊外的な家族像夢が託され、今はそれが幻想の牢獄と化したというもの。その空虚なストレス空間から生まれるアノミーや、郊外と土着の性の結び付きからテレクラやオウムが分析される。それは我々には理解不能な他者ではなく、同じ社会で偶然生き方が異なった我々自身なのだ
2012/10/02
★★★★★
「90年代文化史」としてはそれなりに面白いんだけど、肝心の「分析」がお粗末かなぁ。なんでもかんでも「売春女子高生」が分析軸で相対化の視点に欠けてるから、一種の「エスノセントリズム」に陥っていて説得力が無い。「センセーショナルな話題」に限って根拠の無い数値を出してくるのも「週刊誌的な」作為を感じる。結局この人が一番関心を持っているのは、世界でも現代社会でもなく、「35歳(当時)なのに女子高生の気持ちがわかっちゃうボク」なんだろうね。あ、「括弧の無駄使い」はこの人への「オマージュ」ですので、念のため。
2009/10/24
ゆうき
社会が成熟した後、戦後日本人が持ち続けた家族幻想、学校幻想、恋愛幻想が崩れていく。大人はその幻想にしがみつくしかない。しかし、若者はその現実に絶望して自分たちの居場所を求めここではないどこかを探し迷う。その結果として90年代に起こった援助交際、ブルセラ、オウム事件、酒鬼薔薇事件から郊外という70年代の素晴らしい幻想が崩れたことを象徴する事件を分析しフィールド・ワークし今までの幻想としてのみんなの共通前提が崩れ、バラバラな価値観が生まれてくる時代へと突入したと告げる一冊。90年代という時代を知るために必読。
2013/02/07
ダイキ
「〈その言葉に傷つく〉と言いつづける共同体と、〈そんな意図はないんだから〉と言いつづける共同体とが、一つの社会でどうやったら共生(棲み分け?)できるか〔略〕この問題については、一律の処方箋は実はありえない。〔略〕〈公共性〉をめざすコミュニケーションの継続の中で、その都度〈機会主義的〉に線を引いていくしかない。〔略〕〈差別語〉をコードでもって一律禁止することは、こうしたコミュニケーションの持続可能性を妨げ、問題を注意不注意の問題や、個人の意識の高低の問題に縮減してしまう。」(『成熟社会の差別論』)
2021/12/21
感想・レビューをもっと見る