「伝える言葉」プラス (朝日文庫 お 40-5)
「伝える言葉」プラス (朝日文庫 お 40-5) / 感想・レビュー
メタボン
☆☆☆☆ 障害を持った長男光との「共生」について語る言葉が深い。何度も読みなおし、書き直すという、大江の言葉に対する真摯な姿勢が伝わってくる。東日本大震災に動揺する作家の姿を描いた「晩年様式集」を2013年に著して以来、大江の作品は世に出ていない。やはり、それが「最後の小説」になってしまうのだろうか。閉塞感が漂う今の時代だからこそ、大江の言葉を「希求」してやまない。小野正嗣の解説が素晴らしい。的確に大江を読み込んでいると感じる。
2022/10/11
なおみ703♪
「寛容を世界に発信する新しい市民たちが出てきている」という希望のメッセージが良かった。また、大江氏の母がつくり話を交えながら話す大江氏をのびのびと育てたために話を面白く作ることがでたというエピソードが微笑ましかった。また。大江氏の息子、光さんについて、久しぶりにCDを聴きなおしたいと思ったことと、障がいがあっても、心身ともに「まっすぐに立っている」(自立)ことができるように育ててきた想いを改めて知ることができた。そして何より「意志的な楽観主義」にたって、「恢復」していく姿を信じて育てる姿勢に共感できた。
2018/11/15
浅香山三郎
『朝日新聞』に月1回掲載された文章と、3編の講演をベースにした文章群を収める。3年間特定の作家を決めてその著作を徹底的に読むという学者のやうなきまじめな大江さんの読書習慣と、教育基本法改定という時事的な問題への意見表明、大江光さんの作曲活動のあゆみと、自らの文学・音楽体験を重ね合はせたエッセイなど、内容は多岐にわたる。大江さんの小説の方はまだ手を付けられないので、かうしたエッセイをもつと読んでいきたいと思ふ。
2023/09/10
belier
2006年11月に刊行されたエッセイ集の文庫版。いつものスタイルで、自身が考えていることを語り、読んできた書物から多くの言葉を紹介してくれている。印象に残ったのはフロベールの言葉。大江も同じ考えという。「自分が小説を書くのは、みずからの判断を読者に伝達するためではない。私はつねに事物の魂に向かうよう努めたのです」大江はさらに自身の言葉を足す。「そして小説を読むことは、細部の言葉のいちいちにそくして事物の魂を受けとめることであり、書き手としてはそれが実現するよう文章をみがくほかない」襟を正さなきゃ。
2024/10/29
久美
大江健三郎さんの本は取っつきにくいと思っている方に読んでもらいたい。ビギナー用というか、大江健三郎の考え方をこの本で知って、そのほかの本も是非読んで欲しい。私のお勧めは「自分の木の下で」と「新しい人の方へ」。大学生の時に読んだけど、今でも私の人生の中のベスト1、ベスト2です!!(実は、私、この本を読んで「沖縄ノート」を是非とも読んでみたいと思いました)
2012/07/11
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