戸越銀座でつかまえて (朝日文庫)
戸越銀座でつかまえて (朝日文庫) / 感想・レビュー
ゼロ
一人暮らしをしていた著者が実家の戸越銀座に戻り、街の人々の交流を書いたエッセイ。一人暮らしにし敗北して実家に戻った、とあとがきに書いてあるように実家に戻ることに思うことはあったようだ。また愛猫・ゆきの死もあり、精神的に落ち込んでいたのが文章からも読み取れた。40代、非婚。著者の生きづらさをコミカルにエッセイに落とし、はっとさせられるような観察眼もあった。自由とは何か?の問いと自由を手にした何を手に入れた?の解。旅する作家ならではの、地元や高齢者の向き合い方があり、面白い本でした。
2024/07/19
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【自由という名の暴君が、人生を食いつぶし始めた】他者との会話は大事。猫との時間も大事。両方ある生活が、天邪鬼な著者の「怪物的自由」をゆるめていく。強かで臆病な、商店街の人々も気付きをくれる。誰もが必死にもがいているのだ▼「大人には、安心して聞きたい子どもの夢というのがある。(略)笑われるくらいならまだいいが、へんだと思われたらつぶされる。危険だと思われたら矯正される」(P.87)「思想確認」...なるほどですね。
2020/12/11
makimakimasa
これまで著者の若い頃の香港滞在記、1人暮らしエッセイ、中国旅行記を読んできたが、本書は40過ぎての実家出戻りエッセイで、これまた興味深く手に取った。最初は周りの目を気にし過ぎで、随分つまらない自意識過剰に感じたが、子供時代を振り返るあたりから落ち着いてきて、世の中を斜めから鋭く捉えるいつもの視点は健在だった。溺愛した愛猫との別れや、地元お年寄りとの交流を通した心境変化、再生。その間、懐かしの皆既日食や、3.11その日の記録もある。自分は都内出身ながら戸越は死角で縁が無かったので、いつかぶらつきに行きたい。
2020/05/24
Inzaghico (Etsuko Oshita)
星野が生まれたのは1966年の丙午。丙午の年は「女が男を食い殺す」ので女性が極端に少ないとは知っていたが、八百屋お七が丙午生まれなのが由来とは知らなんだ。丙午生まれの星野が、一人暮らしをやめて戸越銀座にある実家に戻ってきてからの日々を描いている。先日読んだ『首都圏大予測』にも、21世紀になってから吉祥寺はチェーン店が増えて魅力がなくなった、とあった。星野も、21世紀に入ってからの吉祥寺の激変ぶりに困惑し、武蔵野市に住む魅力がなくなったことも、実家に戻った一因に挙げている。一番の理由は愛猫の死だけれど。
2020/04/20
さな
著者が精神的にまいっていた頃の作品と知らず面食らった。でも観察眼は鋭く、久しぶりの古里に戸惑いながらも多くのことを教わる著者。最後の2行ではっとさせられた章も多い。私も教わった気がする。
2020/01/05
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