イタリア発イタリア着 (朝日文庫)
イタリア発イタリア着 (朝日文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
内田さんの何冊目かのエッセイです。ここでもイタリア人と同じ目線での日常が描かれています。ミラノ、ナポリあるいは6年に及ぶ船上での生活などでのイタリア人とのやり取りが異国人の目線ではなく同化されているようです。塩野さんの作品でイタリアの歴史を知り須賀さんの作品では文学者的なサークルでのやり取りを知ることができますが内田さんの作品では現在のイタリア人というものがわかります。
2020/01/05
のぶ
イタリアを題材にしたエッセイ集。内田さんはイタリアでの生活が長いので、すっかり現地の人の同化しているような印象を受ける。今回は内田さんが本拠地としているミラノのことのほかに、ナポリや港町のリグリアを訪れた際の紀行文。と言っても観光気分で書かれてはいないので、文章はちょっと硬め。北のミラノと南のナポリを比較すると、その民族性の違いがよく分かった。それと、イタリア人はアバウトな感じを持っていたが、とても真面目な人が多いことも表されている。内田さんにしか書けないディープなエッセイ集だった。
2019/03/13
こばまり
言わば人生を決めた若き日のエピソードが披露されているが、度胸のよさに感心する。オリーブオイルと塩にパン。それだけなのに腹が鳴る。他でも読んだが、筆者が船を住居としていた頃、あの頃のムードに胸苦しい程の憧れを感じるのだ。
2022/12/08
ann
40年くらい前のイタリアの姿が、著者の鋭く優しく好奇心に満ちた、眼力と記憶力により蘇る随筆。行ったこともない国なのに、その筆致と言葉の組み合わせにより、まざまざと映像として読む側の脳裏に描き出す力量に嘆息の連続だった。これは映像にすべきでは無いし、もちろん著者もそれは望まないだろう。読んだ人間だけが飛んで行ける昔のイタリアの風景。読んだ人間の数だけある。と思う。
2023/02/07
ユメ
読み進めると、眼前にミラノやナポリの光景が広がってゆく。私はいちども踏んだことのない土地だ。思い描いた風景は、実際とはてんでかけ離れているかもしれない。けれど、手を伸ばせば触れられそうなほど、くっきりと見えてくるのだ。内田さんの紡ぐ文章には、そういう力がある。物語の行間のような、ナポリの細くうねる路地を抜けてゆくたび、かつてこの街に暮らした人、今ここで生きる人、そして遠い日本から訪れた内田さん、数多の人々の記憶が幾重に重なり合って立ち上がる。なんと豊かな物語か。この世界は十二分に興味深いと思い知らされる。
2019/03/03
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