中年危機 (朝日文庫)
中年危機 (朝日文庫) / 感想・レビュー
Vakira
人間は生物であるので命がある限り生きたい。そして自分の分身を残し、生きる世界を広げる。自分が存在しなくなることに恐怖があり、生き続けたい。何で生き続けたいか?世界の変化を見届けたいし、子供がいれは成長とその次世代だって見届けたい。未来へ行き、知りたい欲求が人間にはある。人によって好き嫌いの個人差はあるが色んな経験が欲しいのだ。夢を覚えていれば人生は2倍楽しいかもしれない。そこで物語(小説、映画等)の存在意義を知る。疑似体験として深層欲求を満たしてくれるもの。それが小説だ。誰かの小説に乗り込み精神高揚する。
2021/10/05
じゅん
中年終盤の身で読むと、ほぼ共感してしまう12の小説世界の事例。「潜在するX」「ワイルドネス」「固体でありながら流体力学的な性質を備えた砂」「自然現象のように抗し難い力ととらえエロスを擬人化しなかったギリシャ人」「トポス」「夫婦の転生」「道草の意義」色々考えさせられた。『身体の結合が争いをけりをつけてくれるのは中年初期までで』『人は人間と動物の差があまりないことを自覚』『中年の親は、自分の子どもをよき家畜にしようとしていないか反省してみる必要』。お気に入りは『凪の光景』を元にした第8章の「二つの太陽」かな。
2021/04/11
Inzaghico (Etsuko Oshita)
養老の巻末エッセイが的を射ていて、ふむふむと思いながら読んだ。京都は「おとな」を輩出(正しい意味で)するが、関東からは「おとな」はなかなか出ない。「その本質が重層的であるような文化というもの、それが関東にはいささか欠けているのである。関東人はいくら金を持とうが、基本的に貧乏人の性癖を残しており、どことなく乱暴で直線的である」と書き、続けて「関東の小説家というなら、私の頭にたちまち浮かぶのは、三島由紀夫、石原慎太郎、深沢七郎などであり、どう考えたって、これはどこか文化的ではない」とあって、思わず吹き出した。
2020/10/10
roughfractus02
臨床家である著者は、一般に1つの山としてイメージされる人生を2つの山として捉え直し、ライフサイクルの前半を社会の一般的尺度に合わせる自我(意識)の確立の段階、後半を個別に起こる「内的必然性」に対峙するユング的な自己(意識と無意識)の個性化の段階に分けた。年収や地位で自分を数量的に計る青年期を経て、生命としての自己の変化に向き合う中年期は、環境や身体を含む個々の無意識と対話を始めるのだという。中年期にある男女が主人公の12の小説を読み解く本書は、危機が単なる終わりではなく、新たな始まりとなることを例示する。
2023/02/06
Ryoko
本の帯の紹介に惹かれて読み始めたが、心理療法家が有名作家が書いた小説を解説?したものですね。読み切ったが小難しくほとんど興味を持てなかったというが正直な印象。ただ谷崎潤一郎の小説と本間洋平の「家族ゲーム」は面白そうと思った。
2021/02/08
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