日本戦後史論 (朝日文庫)
日本戦後史論 (朝日文庫) / 感想・レビュー
Tui
舌鋒鋭く怒りで頭から湯気沸いてそうな白井氏と、いやそれはこうなのではと押しとどめつつ静かに怒り心頭な内田氏との対談です。テーマは日米のいびつな関係。さきの終戦から現在まで、アメリカと日本の圧倒的な上下関係性は続いている。日本国内でどう思おうと国際的には、米国の庇護と支配のもとにある日本に主権なんて暗にないも等しい扱いになっているかもしれない。そのことに、政権もメディアもタブーとばかりに触れようとしない事実。とくに触れずとも、もう暗黙の了解なのかな。
2022/01/14
山ろく
永続敗戦論の白井聡と日本辺境論の内田樹の対談。「敗戦の否認」継続と「米国の属国」継続。憲法9条と天皇制と安保条約と米国のアジア戦略に日本人は何を求め、何を見てきたのか。語られている内容はこれまでに何度も目にしてきたはずだが、様々な事柄のつながりをあらためてていねいに説明されると腑に落ちる感覚がして心地いい。あちこちに線を引きながらの読書になった。戦後教育やなぜ韓国に謝罪しないといけないのか(それを言わないのが大人だし、死者とともに共同体を形成できるのが国民国家)、反米愛国運動が起きない訳などにも話は及ぶ。
2021/09/03
tokko
今の保守政党がなぜ親米にならざるをえなかったのかがよくわかります。戦時中に中枢を占めていた人間が、そのままアメリカによって対ソ戦略に組み込まれていったわけですね。そして冷戦が終わった後もそのまま対米従属を続けてしまっていたというのが今の日本である、というのがお二人の見立てです。そういう意味では今でも「あの戦争」を引きずっている、というか総括できていないことが、ようやく戦後世代の僕達にもわかってきたということでしょうか。
2024/02/28
猫丸
書名は変えたほうがよい。題するなら「敗戦国民の精神分析」ですかね。過大に評価されている気がしていた内田樹であるが、なかなかどうして種々のタマを持っているじゃないの。良い指摘がいくつかある。まず戦前陸軍の暴走過程が戊辰戦争の復讐であると。陸士が学力だけでのし上がれる組織であったからこそ、非薩長の奥羽越人材が中枢に入ることができたという。この視点は無かった。それからアメリカカウンターカルチャーが大国維持の隠然たる補完勢力であったとの見立て。これも鋭い。フランスと日本の類似についても蒙を啓かれた。
2022/02/15
かんがく
永続敗戦論の著者とともに、内田が日本の戦後について対談していく本。5年前の本の文庫化であるが、今の日本の分析としても有効。歴史に関する部分など乱暴に感じるところもあるが、日本の現状への危機意識の提言としては良いと思う。フランスが敗戦国であるという指摘は、戦後を捉える上でもう少し深く考えていきたい。
2022/02/09
感想・レビューをもっと見る