邪宗門 上 (朝日文庫 た 21-1)
邪宗門 上 (朝日文庫 た 21-1) / 感想・レビュー
遥かなる想い
新興宗教団体「ひのもと救霊会」の誕生から破滅を描いた作品。壮大な叙事詩という紹介があったのだが、やや難解で、読むぞという強烈な意識が必要。大本教がモデルとされているらしいが、ラストはひどく哀しい。高橋和己の世代が見た夢を自ら壊していくのようだった。
2010/06/26
satoshi
大本をモデルにした"ひのもと救霊会"を描いた小説。大本については昔何冊か本を読んだことがあって、この教団にどういうことがあったか、その大雑把な歴史は知っていたんだけど、詳細までは知らず。キリスト教や日蓮宗からの糾弾への反論、京大での職を捨てて信徒となった人物の法廷での演説がすごい。本を読むのは早い方なんだけど、かなり集中しても三日かかった。これから同じくらいの厚さの下巻を読みます。
2011/06/03
湖都
新興宗教が弾圧され、歴史が流れていく様を描いた小説。モデルとなっている宗教もあるようだ。新興宗教と聞くと胡散臭いようなイメージだが、この本では民族や政党や会社などのような社会的組織である。もちろん、読んでいて違和感のある教えや風習もあるが、別の文化を覗き見ているように興味深い。思わぬところに天皇や五・一五事件が出てくるのも面白い。主人公格の潔がいまいち掴めないキャラだが、下巻では地に足をつけるのだろうか。
2017/10/05
メルシュトレエム
上巻終了。戦前の新興宗教に対する国家権力の弾圧に晒され、内部分裂・他宗教団体から中傷にあい対応に忙殺される人々。日本(当時の事?現在もか?)の信仰にまつわる社会構造の特殊性(上部構造の頂点と下部構造の最下点がつながり円環構造になっている)等、おもしろい考え方だなと感じた。状況の為かひたすら空気の薄い地平を這い回るような感覚が読書中継続する。終盤に成長した千葉潔が登場し、彼が救霊会でどう行動するか気になり、下巻が楽しみ。カムイ伝と同じような空気感があった。
2012/11/30
太郎
宗教団体が最後まで妥協せずにその本来の目的を貫き通したらどうなるか?を小説にしたのが、この作品です。作者は、学生時代には、宗教的ではなくマルクス主義的な手法での解放=社会主義革命を、志向していた人で、そういった真摯な願いが、作品の全編の基調にあります。 もちろんストーリーも、弾圧、逮捕、裁判、貧困等悲劇の連続なのですが、その底には、「人々の幸せを純粋に願う気持ち」「破滅の中でも仲間を信じ許す気持ち」が流れているので、終始緊迫・緊張した硬質な雰囲気でもありますが、不思議な事に読んだ後にむしろ希望を感じます。
2014/09/23
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