邪宗門 下 (朝日文庫 た 21-2)
邪宗門 下 (朝日文庫 た 21-2) / 感想・レビュー
ヨーイチ
高橋和巳と邪宗門って文字は母親(それとも姉?いや母親だろう)の周辺で見慣れた物であったけど読んだのは今回が初めて。勝手にキリスト教辺りと決めつけて、敬遠していたと思う。ジワジワと積み上がったと云うか堆積して行った「エネルギー」がラストの数章で解放される。取り憑かれたような凄惨な描写は鬼気迫る。主要人物の最後は小説表現の最高峰かもしれない。途中から分かったのだが、この教義、教団は作者の創造物だと知りしばらく唖然。小説でもこんなことが出来ると云う驚き。宗教を扱いながら「奇跡」の描写が控えめなのは、その所為か。
2017/09/07
湖都
壮絶な最後であった。上巻の最初からすでに傾いていた新興宗教ひのもと救霊会ではあるが、指導者を次々と失い、分離し、度重なる弾圧を受け、第二次大戦後の第3部ではなんだかよくわからない団体となっている。継主・阿貴が祈ったように、なぜそもそもの教えに立ち返れなかったのか。なぜ邪宗となってしまったのか。すべての宗教は最初は新興宗教だったなら、救霊会のように散った宗教はどれほどあることか。寂しすぎる結末を読み、宗教とは何であるのか改めて疑問に思う。
2017/10/07
raizou27
著者の、圧倒的なかつ粘り強い描写力に、ただただ驚きを覚えています。宗教的というよりも、社会的思想の具現化と思想実験の試みでした。丸ごと昭和史の底部を描き切っています。昭和を懐かしむ風潮がある昨今、その生々しい息吹を感じ、身近に思い起こすよすがに、その基礎資料として推薦したい気持ちです。今でも、大本教には関心を持っていますが、社会に対して一人立ち上がり、時代の全てに対して一度戦いを挑む、そんな宗教的人物にも十分目配りがされているのにも驚きです。
2016/01/11
きくまる
下巻はすさまじい。登場人物、一人一人、その思想的背景やら行動の意味やら、きちんと解説しながら話が進み、最後には、その解説している語り手(は、=筆者なのか?)のこの話に対する解釈まで加わって。戦前から変わっていない権力者側の構造、結局きちんと構築されなかった新たな倫理、貧困故にできてしまう救われない心の闇等々、読み終わった後は色々去来する。と同時に、表現するというよりもどうにも直接言わないではいられない筆者の人間への思いに、若さを感じる。もっと長く生きて、その後どんな小説を書いたか、見たかったなぁ。
2012/01/09
スターリーナイト
2019-36 最高です。
2019/05/07
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