官能小説家 (朝日文庫 た 26-4)
官能小説家 (朝日文庫 た 26-4) / 感想・レビュー
佐島楓
漱石や鴎外、一葉から文豪という意味付けを外してしまえばただのひとに過ぎない。小説を書くというとてつもなく奇妙な行為で繋がるひとびと。著者の自嘲であり、苦悩であり、模索の結果と受け取っていいのだろうか。
2018/05/10
ちぇけら
明治の文豪たちの青春。なにを書けばいいのか、理想とする小説とは、文学とは。文学に取りつかれた文豪の苦悩が胸に滲みる。明治を描き、現代を映している。現代で鴎外はAVに出演し1日に3回本番をする。明治で樋口一葉は十四歳の少女の官能の疼きと、その少女の体を求める四十八歳の男の欲望を描き、鴎外とホテルで何度も交わる。一葉の師である桃水は嫉妬に狂っていく。「『小説にほんものもにせものもありはしない』漱石が静かに言った。『わたしもまた、言葉や感情を借りてくる。小説家のふりをしたことがない小説家などあるわけがない』」
2018/03/15
葛西狂蔵
『日本文学盛衰史』同様、明治の作家達をネタにしたパスティーシュだが、短篇を繋ぎ合わせた印象の『日本文学〜』より作品として纏まってはいる(個人的には日本文学〜の方が好みだし、より先鋭に思う)著者が作中で執筆する『官能小説家』の中で鴎外が執筆する『官能小説家』を包むメタ構造なのだが、主になるのは鴎外、漱石、一葉、それに一葉の師として知られる半井桃水。忘れ去られ読まれなくなる作家としての自覚を持つ桃水が一葉の文学的才能を見抜き磨き上げていく過程と、加速し始める終盤の展開がスリリングで印象的だった。
2017/05/23
31monks
半井桃水の魅力的な人物像。
2009/08/16
カラシニコフ
『日本文学盛衰史』のスピンオフ作品。これが本当なのか嘘なのか、難しいところだが、凄い面白かった。当時のカルチャーと明治時代の文学が上手く混合していて、不思議な感覚を味わった。小説家・タカハシさんが自虐的になっているのも良い。文学とは何なのか、深く考えさせられた。
2020/10/08
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