小説の経験 (朝日文芸文庫 お40-1)
小説の経験 (朝日文芸文庫 お40-1) / 感想・レビュー
抹茶モナカ
多分、大江氏がノーベル文学賞を受賞した頃に本屋で手に取り、巻末の索引欄から「村上春樹」を引き、村上氏についてどう書いているのかだけ、当時読んで放っておいた本で、ふとしたキッカケで最近全部読み返した。前半に『読書再入門』の講義録のようなものが収録され、後半は『文芸時評』が収録されている。大江氏の勉強家ぶりが伝わって来て、思わずドストエフスキーを読みたくなる本。マーカーで線を引き、付箋を立てて読んで楽しかった前半に比べ、後半は日本文学の当時の時評だから、幾分、厳しい辛口批評がイヤミな感じを受けてしまった。
2019/12/03
やまはるか
図書館本 著者の1990年代の文芸時評など。障害のある子どもの世話をしている母親が「女学生の頃に読んだこの国や世界の名作をもう一度読んでからこの生を終えたい。追い立てられるように生きているうちに、それでも不思議なことですけど、今ならトルストイのことが良くわかるのじゃないか、それだけの心と体の経験を重ねているのじゃないかと言う気がしますから」と語る。脳梗塞で急逝したその人が思いを果たしたかどうかは触れられていない。「戦争と平和」をもう一度じっくり読みたいと切実に思う。否、何度でも繰り返し読みたい。
2020/10/19
よし
「文学再入門」のタイトルで行ったテレビ講座。自分の読書体験をもとに、「小説との再会」について、熱く語りかけてくる。「若い頃に読んだ本でどうもよく分からなかった、しっくりこなかった、ところがそれがある年齢を経てから読み直してみると面白くなったりする、骨身に沁みるようですらある、」経験について。「あの頃、自分で買った本のことは、装丁の具合や紙の質、紙と糊の匂いまでよく覚えております。」確かに、その頃に、一度にタイムスリップしてしまう。読んでみて、あれほど遠かった大江健三郎がとても身近に感じられた。
2015/10/16
読書三餘
もう一度、人生に小説いかがです?ソフトな言い回しで読書離れにもやさしい「文学再入門」、平成4年から6年の間に置かれる著者の鋭利な「文芸時評」の二部構成で語られる国際性にも富んだ本書は、文学のこれからとメディアを見据える、約四半世紀前の文献たりえる。 ともかくも均一な収録、短いフォーマットが読みやすい。個人的には第二部が専門領域の講義に感じられたせいもあり、第一部がなおも親しみやすい結果となった。批評より小説好みの自分には納得。 お薦めは、『井伏鱒二の祈り』『小説の行方』『短編の不思議』『ファンタジー』。
2020/07/20
国重
大江健三郎によるテレビの講座番組のテキストと92から94年までの文芸時評を収録。
2017/02/06
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