サブカルチャー文学論 (朝日文庫 お 49-2)
サブカルチャー文学論 (朝日文庫 お 49-2) / 感想・レビュー
harass
批評家江藤淳は当時の新しい文学を『サブカルチャ』と定義し、消極的ながらも評価していた。しかし、対象の作家によって肯定否定と評価が異なっていた。著者は各作家の作品を取り上げていくことで江藤の基準を厳密に追い、現在のサブカルチャーを考察する。中上健次、W村上、吉本ばなな、田中康夫、山田詠美、大江、三島、石原など。一般的なサブカルチャーとは少し意味合いが異なる。漫画・アニメの影響を受けた小説については、漫画原作者編集者の著者の面目躍如で、いろいろ感心した。特に村上龍と幻冬舎文学について、実に納得。良書。
2018/09/09
KA
「村上春樹にとっての "日本" と "日本語"」。問いの設定の正しさ、文章のなかにある閃きとその裏にある確信さ、そして論全体を運ぶレトリックの練り上げられぶり。いやー上手い。見事だ。江藤淳『成熟と喪失』、加藤典洋『アメリカの影』、村上春樹『やがて哀しき外国語』(そして『ねじまき鳥クロニクル』)を読んだ人はマストな評論だと思います。坪内祐三『アメリカ──村上春樹と江藤淳の帰還』(2007)はこれが元ネタで間違いない。
2022/04/03
晴
「本を読む」ことについて、根本的に考え直さざるを得なくなるような読書体験。この書籍について、今の私は語る言葉を持たない。
2019/07/25
しんかい32
変なタイトルだが、江藤淳の批評をてがかりにさまざまな文学者たちを分析し、虚構を生きざるをえないのが人間なのでは?というテーマを追った本(だと思う)。一人ひとりの文学者に対する分析は丁寧で感動するが、全体としてのまとまりはよくわからなかった。より理解するには、江藤淳と少女フェミニズム的戦後も読んだほうがよさそう。
2012/05/27
aoi_zero
石原晋太郎を取り上げて彼の小説の資質を読み解く部分で、彼のマザコン体質と根拠のない暴力性を指摘しているが、最近のネトウヨ(笑)的言質を好むオタク層との親和性がかなり引っかかった。良く考えれば石原晋太郎の幼稚な態度ってあんまりシンパを感じるような高級なものではない筈なのにソコソコ支持を受けてしまうのは恐らく自民党に対する不満の受け皿になっている民主党と言う構図と同じでそのマルッとした裏返しなんだと思う。
2009/12/03
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