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静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

作家
池澤夏樹
出版社
朝日新聞社
発売日
2007-06-07
ISBN
9784022644008
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静かな大地 (朝日文庫 い 38-5) / 感想・レビュー

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NAO

【図書館が長期休館なので(泣)、未登録の本を再読中】明治時代、すでに科学的に農業を見つめようとした人物がいたことには、驚かされるばかりだ。開拓者としての若々しい希望に燃え、その地に古来から住むアイヌとの共存を心から臨んでいたその青年の大志が、利己的な考え方や差別意識などであまりにもあっけなく挫折させられてしまうことに、なんともいえないむなしさと怒りを感じずにはいられない。作者は、主人公の子孫に当たるそうだ。この作品は、リベラルな考え方で新しい時代を生きようとして夢に破れた先祖への壮大な鎮魂歌だ。

2020/03/15

キムチ

静かな大地・・ラストで綴られる"熊になった少年”に想いを馳せつつ 今は亡き大地を偲ぶ~シマフクロウの嘆きを聴きつつ読み終えた。1週間、日常に流されつつもユカラの調べが頭に常在し響く時間だった。筋を書くのは容易いが、そうするとレヴューとわたしが任ずる心が皆無になる・・特にこの作品の様な情動を頂けた類は。文芸ジャンルは今一つ好きでない、池澤氏の作品もあまり読めておらず まして福永氏は皆無。語り口が転変する流れに乗り切れず 結構苦渋。父/由良 淡路より渡ってきた士族の呻吟。3人称のないアイヌの語り・・それだけに

2022/10/14

goro@80.7

アイヌモリシィだった大地に和人が押寄せる明治初期。淡路からも弾かれるように移住してきた宗像一家の物語。人は何をしてきたのか歴史の中でも埋もれてしまうものは沢山あるのだろうが、語り継がなければならないものがあるよ。人はとても美しい、そして卑しいもんだわ。大切にしたい1冊。

2024/02/15

翔亀

著者の母方の曽祖父とその兄をモデルにした明治時代の壮大な大河小説。祖先の人生を掘り起こしほぼ史実に即しているというが、涙なしには読めないのは、その人生が、成功の果ての滅びの美に彩られていることもさることながら、明治国家の栄光と悲惨に重ね合わされるからだ。維新後に命で北海道の開拓民として前途洋々たる成功への途。その地の先住民アイヌと共生する牧場を建設しそれが故に滅びていく。大きな歴史の流れ(汚点としての)に抗した果ての滅びの高らかな歌。この絶唱であり哀歌である、人生の意味を今こそ聞き取らなければならない。

2015/05/18

かいゆう

北海道開拓の本と聞いてワクワクしながら読み始めたのだが、何とも言えない苦しさが残る本だった。蝦夷に入って来ては、アイヌから土地も鹿も鮭もあるだけ奪っていく和人たち。移住民達も生きていくことに必死であっただろうが、なぜアイヌと共存していくことができないのか。力で封じ込め、土地を奪う。そう言えば、昔からずっとそんな事があちこちで繰り返されてきたのだった。知らなかった蝦夷の開拓と、住処を追われるアイヌの人々、徐々に抜け殻のようになっていく三郎の姿はとてつもなく苦しかった。

2020/06/24

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