祝魂歌 (朝日文庫)
祝魂歌 (朝日文庫) / 感想・レビュー
Y2K☮
谷川俊太郎が選んだ、死をめぐる国内外の30のポエム。淡々としていたり抑え切れない悔恨が滲み出ていたり、かと思えば怒りや遺言や新世界へ旅立つ喜びだったり。亡くなった我が子への悲しみを綴った中原中也と吉野弘の詩が痛切過ぎて胸から離れない。ジョン・ダン「死よ、驕るなかれ」とシェイクスピア「ソネット第八一番」も印象深い。死は確かに一つの終わりだと思うが、決して奪い切れないものもある。たとえば言葉。たとえば作品。自分自身は無名で朽ち果てても惜しくないけど、せめて一冊の本ぐらいは後世に残したいと決意を新たにしました。
2015/11/17
Y2K☮
三度目。震災や戦争の前であれ後であれ、死の受け止め方は他の何物にも増して個人的というか内心的なものだと思う。無論生きていくうえで様々な常識や慣習、ルールが必要なのはわかる。でも不謹慎と言いたいだけの声が大きい人には忖度しなくていい。本書の続編が出るときは、甲本ヒロトが忌野清志郎に送った「あなたとの思い出に、ろくなものはございません」から始まる弔辞を収録してほしい。あと何度読んでも井伏鱒二の「『サヨナラ』ダケガ人生ダ』は名文(本来は名訳と書くべきだけどあえて)。高見順の「あとを頼むぜ、じゃ元気で」も沁みた。
2023/03/13
Y2K☮
今月のポエム。いずれ自分も当事者になるのにその予感は無く、それでいて明日にでも唐突にやってくるかもしれない。死とは? たとえばカミュ「異邦人」でママンの死の翌日に女と遊ぶムルソーを不謹慎と騒ぐ輩は、ママンの事を何も知らない。遺族の気持ち、というのはなくて、死或いは死者に対する一人一人の気持ちが独立して存在するのだと思う。故に本書を読んでも書き手の真情は分からない。この「分からない」の再確認が必要だった。ならばその時が来るまで今を精一杯楽しむ。ガンジーじゃないけど永遠に生きる様に学び、明日死ぬ様に生きたい。
2018/06/04
アオイトリ
河合隼雄のおすすめ)谷川俊太郎による死をテーマにしたアンソロジー。死を魂の新しい旅立ちという感性を何度もなぞるように堪能しました。「今日は死ぬのにもってこいの日だ」プエブロ族の古老、「さようなら あとを頼むぜ」高見順、「別れる練習をしながら 生きよう」チョウビョンファ、「はらはらとあられふりける」三好達治。たくさんのフレーズに心を慰められます。
2023/04/14
紫羊
友だちが、結婚式で朗読する詩を探していたので、書店で見つけて「これは良い!」と中身を見ずに購入したら、開くページ開くページ、全て死ぬことだらけ。あらためてタイトルを見ると、「婚」ならぬ「魂」だった。結婚式という場には相応しくないのかもしれないが、これから長い人生をともに歩んでいく若い2人にこそ贈りたい詩が多くあった。まず自分で読んでから、顛末を説明しながら友だちに見せたら、「死について語られたものを読むのは嫌いではない」と、喜んで受け取ってくれた。
2013/11/11
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