六月の夜と昼のあわいに (朝日文庫)
六月の夜と昼のあわいに (朝日文庫) / 感想・レビュー
けい
絵画と句と短編小説を合わせ一つの世界観を形作っていく短編集。エッセイの様に、SFの様に、ファンタジーの様に世界を切り替えて綴られて行く物語の中で、思考の振られにより幻想的な感覚に吸い込まれて行きます。各章を仕切る絵画と句が次章の世界を予感させると伴に、先の章とのつなぎとして、不思議な統一感を感じさせる作品。久々の恩田ワールド全開の作品でした。
2014/07/20
眠る山猫屋
なんとも感想の書き難い作品集だ。奇想というか発想の転換というべきか。イージー・リスニングの精霊とオグネ(田圃の中に残された小さな森)に心の平安を見いだす女性。唐草模様に甦る優しかった父の恐ろしい秘密。妖魔を見に行くここではない世界の田舎の風景。世界を救ったであろう少女のスラプスティックな運命。どれも小さく完成された小品。微かに残酷、でもそれもまた、運命。
2024/05/23
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
東京も梅雨入り宣言。この時期に読むのが相応しいと思い手に取ってみました。タイトルは伊東静雄氏の詩「水中花」の一節から採られたそうです。作者は序文で「人が作ったものの力を借りて何かを生み出そうと悪戦苦闘した」と書いています。杉本秀太郎氏の俳句から着想を得た物語に、新進アーティストのドローイング作品を組み合わせて一つの世界を創出するという試みが結実したのが本書。10篇の短篇小説はファンタジー、ブラックユーモア、ホラー、私小説風と多彩。詩や絵画など他の表現形式を従えてしまうストーリーテリングは際立っています。
2014/06/06
Small World
立て続けに恩田陸さんの短編集を読了です。ただ、収められてる作品は小作品というよりも、言葉のスケッチに近いですね。「Y字路~」とか、「窯変~」とか面白かったですが、何よりも「恋はみずいろ」のポールモーリアが懐かし過ぎです。手品でお馴染み「オリーブの首飾り」や「エーゲ海の真珠」が頭で流れてしまいました。w
2018/05/29
Tui
一世代年上の詩人による詩句や短歌と若手作家の絵画を枕に、まったく次元の異なる本歌取りを試みた短編集。なのですが、こちらの読解力の不足もあり、鮮やかな化学反応を得られなかった実験作、と感じます。著者が得意とする、日常の割れ目にするりと非日常が浸入する様子が不自然で、恩田さんもがいてるなあ、という印象を抱いてしまいました。でも好きな作品もあり。『Y字路の事件』は美しく、『窯変・田久保順子』は恐ろしくもひたすら悲しい読後感。
2015/01/13
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