ふくわらい (朝日文庫)
ふくわらい (朝日文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
これは確かに「物語」ではある。しかも、既存の小説の枠を超えた。登場する人物設定は主人公の定をはじめ、冒険紀行作家の父親、プロレスラーの廃尊、白杖の武智次郎など一般の常識を逸脱している。そして、中でも最も規格外なのが定である。そもそも、定は物語の着想である「ふくわらい」に執着し続けるのであり、他者との関係性を自らの想像力の内にある「ふくわらい」を通してしか結びえない。この作品の持つ発想の物語性は首肯できるが、結末はいささか空中分解気味の感もまた免れない。
2021/03/10
抹茶モナカ
ゲシュタルト崩壊、ふくわらい。読み方はいろいろあるだろうけど、読み物として面白かった。プロレスラー守口廃尊が良かっだけど、文体のせいか、致命的に軽さが登場人物の心の様子を描いても出てしまう。西加奈子の小説には軽さが良くも悪くもあって、登場人物の痛みやメッセージも通俗に感じられるのが残念。小説の後半の展開は、良くわからなかったです。
2017/01/06
hit4papa
他人の顔を妄想でふくわらいする癖をもつ女子の物語です。主人公は有能な編集者ですが、周囲を氷つかせるほどのエキセントリックな性格という設定。そのまわりに集う作家さんや、主人公に想いを寄せる男性、亡き父等、奇人変人のオンパレードです(特に、プロレスラ兼作家の守口廃尊が破壊力抜群)。登場人物たちの交わす会話から、主人公のチャーミングさが浮彫になってきます。クスクスぐらいの笑いあり(そもそも、主人公の名前 鳴木戸定(なるきどさだ)の由来が...)。著者の作品では、本作品のようなちょいオモロイ系が良いですね。
2018/11/22
エドワード
文字が集まって言葉が出来る。それが文章だ。だから文章は「福笑い」に似ている。風変わりな父親に育てられた鳴木戸定は、少女時代から大人の今まで「福笑い」に夢中の女性。今は、風変わりな作家たちの文章を<作品>に仕上げる編集者だ。ひきこもり、プロレスラー、老人など癖があり過ぎる作家たち相手に悪戦苦闘する前半から一転、日伊ハーフの白杖の男性・武智次郎との出会い、乳母の悦子や後輩のしずくとの心の交流など、定の優しさやひたむきさが洪水のように押し寄せる後半が胸を打つ。言葉のひとつひとつにまで意味が深い物語だ。
2015/10/02
三代目 びあだいまおう
久々の西加奈子です。幼い頃から感情がない、いや、感情が『わからない』変わった女の子、定。子供の時に初めて出合ったゲーム『福笑い』(懐かしい!今でもあるのかな?)にはまり、生まれて初の大笑い‼️以後、人と接する度にその人の顔のパーツを動かす想像に没頭。反面言葉は丁寧で、相手を選ばず接する姿はとても素直でかわいい。色々な個性的人間と精一杯関わるうちにその人の感情に触れ自分の感情に気付く、その瞬間からの描写とストーリー展開は他にはない。‼️肉子ちゃんといい、変わった人を書かせたら西加奈子さん断トツですね‼️🙇
2018/10/28
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