ウエストウイング (朝日文庫)
ウエストウイング (朝日文庫) / 感想・レビュー
buchipanda3
軽いツッコミのつぶやきが続く。このつぶつぶ感、いやぶつぶつ感がいいのだと思った。心の中でつぶやいている時は、怒っているとか嬉しいとかじゃなくて(そんな時はムキーとかラララ~な感じでつぶつぶどころではない)、少し落ち着かない気持ちを紛らわすかのような感じだ。登場人物の3人は割とふつう。朧げな将来に不安や孤独がもたげてくるが、面倒に思えてゆら~りとつぶつぶに身を任せる。でも大雨の時はいつもより昂揚?!。渡しって、思わず吹いた。一つ一つの言葉に不思議と味がある。人と人の何気ない繋がりとその収束に心が満たされた。
2021/03/08
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
☆5.0 時折、かましてくる、ボケが、絶妙である。とある情景であっても、それを語る語り手の表現の仕方によってその情景は大いに異なる事を教えてくれるのが津村記久子だ。さして大きな出来事も起きない話を、淡々と淡々と綴りながらも「くすぐる」変化球的言い回しで唸らせながら進行させていく。上手い!
2021/07/19
ばう
★4 とある古い雑居ビル内の会社で働くネゴロ、フカボリ、ビル内の塾に通う小学生ヒロシ。ビルの一角にある物置き場に出入りする、お互い見知らぬこの3人の日常が淡々と描かれていて途中まではまったりと話が進んでいくが中盤の大雨のシーンから色々とストーリーが動き出す。不満を持ちつつも日々堅実に過ごすネゴロもフカボリも母親の気持ちをあれこれ考えて自分の気持ちを中々言い出せないヒロシもみんな「良い人」だ。いや大体津村さんの小説に登場してくる人はみんなこんな感じだから「みんな頑張れ」という気持ちで読んでしまうのだ。良作。
2024/01/18
kei302
心を整えたいときには津村さんの作品を読みます。これは、長すぎて挫折した本。椿ビルディングが豪雨で陸の孤島化した辺りが山場。ここまでは覚えていたけど、ネゴロ、フカボリ、ヒロシの三人が感染症になった部分は読んでいなかったので驚いた。そりゃあ、古いビルだもの。怪しげな菌も飛んでるだろう…。椿ビルが存続できてよかった。津村さん、言葉のチョイスが絶妙。
2022/12/19
shizuka
ひとつの古びたビルを巡る群像劇。大雨の一夜を軸とし、前後で話がわかれているのがリアルさを増す。丁寧な描写なので、少々読むのに時間がかかったが飽きることはなかった。ネムロもフカボリもヒロシも投げやりでなくちゃんと生きている。いや彼らだけでなく、この物語に出てくる人々が嘆きながらもきちんと生きている、生きようとしているのが微笑ましい。廃室でこっそりサボりあっていた三人、メモを介し交流してたのが実はあんなことに巻き込まれ、そして…。ラストも淡々としていて実にいい。デコデコとしていないのが津村さんの特徴なのかな。
2017/12/26
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